嫌悪感を持つ方も多いかもしれない遺体処理の話。「こまでで、読むのをやめておいたほうが良いかもですよ。」と、ご忠告申し上げたうえで比較的最近開発された火葬に代わる遺体処理方法を紹介しよう。
環境問題を抱える火葬
人が死ねば何らかの方法で、遺体を処理しなければならない。ご存じのように、日本ではごく一部の土葬を除き、そのほとんどが火葬である。しかし、温暖化による深刻な影響が懸念される中、火葬による環境中への二酸化炭素、そして人間の体も含めた有機物の燃焼そのものによるダイオキシンなどの汚染物質の放出もまた何とかして減らしていかなければならない。それだけではない。歯の充填金属を燃やせば、水銀が煙と一緒に大気中に放出される。そしてペースメーカー、カテーテルなどなど、体に埋め込まれた様々な医療器具が燃えることによってさまざまな物質が大気中に放出される可能性も、つねにつきまとう問題である。
火葬の環境問題を解決しようと考案されたのが液体火葬
これらの問題を解決しようと開発されたのが、液体火葬である。開発時期は2000年頃なので、18年ほど経っている。
原理はシンプル。処理チェンバーの中に遺体を入れて、100℃近くに温めた水酸化カリウム溶液で溶かすのである。加水分解である。その手順は、以下の通りだ。まず、チェンバーに入れた遺体を153℃程度まで熱したのち、約1000リットルの水酸化カリウム溶液に浸す。所要時間は3,4時間で火葬より2~3倍時間がかかるという。処理が終わった後は、基本的に火葬と同じで、お骨は砕いて骨壺におさめる。使われるエネルギーは90キロワット程度で、測定方法によってばらつきがあり比較は難しいのだが、概ね火葬の4分の1から6分の1程度と言われる。さらに、棺も必要ない。その意味でもエコであろう。
火葬と液体火葬の違いは
液体火葬と通常の火葬の最大の違いは、前述の金属類は溶けたり、破損したり、気化したりすることなく、そのまま残るというところだ。これらの金属類はリサイクルに回される。そして、タンパク質などの生体物質は完全に分解されるので、バクテリアはおろか狂牛病の原因物質であるプリオンも完全に破壊される。その意味では衛生的といえるだろう。
液体火葬が浸透しない大きな理由は?
しかし、液体火葬はなかなか浸透しない。その最大の要因は嫌悪感だろう。例えば、溶かした液体は、当然のことながら安全なレベルまで中和してから下水に流される。「自分のおばあちゃんを、下水に流したい?それは、嫌でしょう」というのが、大方の反応である。また、カトリック教派からは「煙として天に向かうべき魂を下水に流すのはいかがなものか?」という反対意見も出されている。
米国では徐々に液体火葬が浸透中。さて日本ではどうなる?
多くの反対意見、嫌悪感や拒否反応がある中で、アメリカでは少しずつ、液体火葬を遺体処理の1つの選択肢として取り入れる州が増えてきている。その原動力となっているのは、地球温暖化対策として、あらゆる方法を取り入れようという姿勢なのだろう。
液体火葬。日本でも採用されて浸透していくのだろうか?