『宇宙葬』をご存じだろうか。散骨の一種で、読んで字の如く遺骨を宇宙、地球の軌道上に撒くという葬儀方法である。まるでSF映画のようであるが、実際にはどのように行われているのだろうか? 宇宙葬について少し詳しく見てみよう。
宇宙葬の流れ 遺骨が宇宙へ届くまで
主な宇宙葬では、故人の遺骨や遺灰の一部(数グラム程度)をカプセルに納め、数十人から数百人ほどの希望者を集めて一度にロケットや人工衛星に乗せて打ち上げる。カプセルへの納骨は個別に行われるため、他の利用者と遺骨が混ざってしまう、といったトラブルは全くない。
ロケットや人工衛星は地球周回軌道に乗って、数か月から数年ほど地球の周りを漂う。その後には重力に引っ張られ地球に再突入する。宇宙葬の考案当初は宇宙ゴミの増加に繋がることか懸念されていたが、再突入の際には機体ごと全てが燃え尽きるのでその心配もないのだ。また、現在はロケットで大気圏を突破するまでのことをせず、バルーンに遺骨を載せて成層圏ほどの大空に飛ばす、といった簡易的な宇宙葬の方式も多くとられている。
宇宙葬の歴史 世界初の宇宙葬
人類で初めて行われた宇宙葬は、1997年にスペイン領カナリア諸島での空中発射型ロケットによるものだ。この世界初の宇宙葬を経験した故人24人の中には、宇宙を舞台にしたアメリカのSFドラマ『スタートレック』シリーズの生みの親、ジーン・ロッデンベリー氏も含まれていた。使用されたロケットは楕円軌道に乗った後、5年後の2002年にオーストラリアの北部に落下。その後、宇宙葬は海外で定期的に続けられ、少ないときには9人、多いときには43人分の遺骨が宇宙空間へ打ち上げられた。
余談であるが、『スタートレック』シリーズに出演した俳優ジェームズ・ドゥーアンが亡くなった際にも宇宙葬が行われた。
日本で宇宙葬をするには? お金のこと、会社のこと
さて、今まで海外における宇宙葬を扱ってきたが、日本で宇宙葬を希望することは出来るのだろうか。仮にもロケットや人工衛星を打ち上げるのだから、莫大な費用がかかってしまうのではないか…。疑問に思うかもしれないが、宇宙葬は今日本でも関心が高まっており、一般人向けの安価なサービスを提供する会社が増えてきた。
上述したバルーン方式の宇宙葬は、基本料金は24万円程とのこと。実際にロケットや衛星を飛ばす方式になると再安価で30万円弱、あとは50万円前後からのプランが多い。宇宙への散骨というイメージからはかなり手頃な印象を受けるのではないだろうか。インターネットで検索しても、宇宙葬を取り扱う会社は近年どんどん増えている。今後、日本ではより身近な葬儀方法になっていくかもしれない。
最後に…
遺骨を宇宙へ飛ばすというロマンたっぷりの宇宙葬。近年科学の発達とともに可能となったこの葬儀方法は、宗教やお墓のことにとらわれないという面を持ち合わせているために、今後もっと支持されていくのではないだろうか。空を見上げて大切な人に思いを馳せる、そんな見送りの仕方を、選択肢の一つに入れてみるのもいいかもしれない。