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千年以上前から存在していた当時の散骨と、私たちが考える現代の散骨の違い

今年から神奈川県横浜市は、市営斎場で行われた火葬後の「残骨灰」を3000万円以上で売却すると決めた。市内4ヶ所の市営斎場から出る灰は毎年57トンに及ぶ。そしてその中には、金・銀、パラジウムなどの貴重な金属が含まれており、それらを適正にリユース・リサイクルするという。

千年以上前から存在していた当時の散骨と、私たちが考える現代の散骨の違い

遺族が引き取らなかったものや拾骨後に残った灰を再利用する横浜市

本来、火葬後に残った灰については、遺族に返却すべきなのではないかと考えられるが、横浜市健康福祉局健康安全部環境施設課によると、残骨灰の大半は、火葬・収骨後の焼却灰、集じん灰、炉床保護剤(戸塚斎場は除く)、義骨などの金物、そして何らかの理由で遺族に引き取られなかった焼骨である。これらをただ「売却」するのではなく、関係法令を遵守した適正処理を行う。そして売却によって得られた収入は、慰霊を表すことや、斎場を利用する人たちに目に見える形で還元し、横浜市の予算・決算時に明示するとしている。

納骨出来ない方や、そもそもお墓を持たない方が増えている

近年、家族の遺骨の「処理」に困っている人が増えてきたと言われている。墓を買うことができないために、自宅に遺骨を抱え込んだまま暮らしていたり、意図的に駅のコインロッカーなどに置き去りにしてしまう場合もある。また、子や孫の世代に負担をかけたくない、または自分が死んでしまったら、管理する身内が誰もいないため、先祖代々の墓を撤去してしまう「墓じまい」も珍しくない。また、墓を持たないことを前提とした形で、遺骨を海などにまく「散骨」も多くなってきた。

これらは現代ならではの「新しい」状況だととらえられているが、日本において、「散骨」そのものは決して珍しいものではなかった。

万葉集にも登場した散骨。そこでは遺骨自体への負の感情は感じられない。

例えば『万葉集』(7世紀後半〜8世紀後半)内の、人の死を悲しむ歌・挽歌(ばんか)の中には、散骨を詠んだものがある。

    秋津野の人のかくれば朝撒きし 君が思ほえて嘆きは止まず(巻7・1405)
    (秋津野(あきづの)と人が口にすると、朝、骨を撒いたあなたのことが思い出されて、嘆きが止まらない)

    玉梓の妹は玉かも あしひきの 清き山辺に撒けば散りぬる(巻7・1415)
    (玉梓(たまづさ)の妻は玉(たま)なのか、(あしひきの)清い山辺に骨を撒いたら散らばってしまった)

    玉梓の妹は花かも あしひきの この山陰に撒けば失せぬる(巻7・1416)
    (玉梓の妻は花なのか、(あしひきの)この山陰(やまかげ)に骨を撒いたら見えなくなってしまった)

これらの歌から窺い知れることは、撒いた「骨」そのものへの忌避感、そして中世以降の日本で、死そのもの、そして死人の「骨」に付随するようになっってしまった「ケガレ」「不浄」「不吉」視は全く存在しない。最後の歌に至っては、「骨」を「花」そして「玉」、すなわち今日で言う「宝石」になぞらえてさえいるのだ。

淳和天皇は、天皇としては珍しく、自ら質素な葬儀と散骨を希望し、実際に叶えられた

また歴史書の『続日本後紀』(855年頃)巻9、承和7(840)年5月6日に、死を目前にした淳和天皇(じゅんな、在位823〜833年)は皇太子の恒貞親王に、本来自分は飾り立てることを好まない。人や物に迷惑をかけたり、無駄をしたくない。葬儀に関する準備は全て簡素とすべきである」と述べ、「人は死ぬと霊は天に戻り、空虚となった墳墓には鬼が住みつき、遂には祟りをなし、長く災いを残すことになると聞いている。死後は骨を砕いて骨にし、山中に散布すべきである」と命じた。そして残された人々はその遺詔(いしょう)を守り、3日後に山城国乙訓郡物集村(やましろこくおとくにぐんもずめ、現・京都府南部)に葬った。骨は粉砕して大原野(おおはらの)西山の嶺の上に撒いたという。

淳和天皇の時代は「大化の薄葬令」も影響していた

淳和天皇の場合は、個人的な葬送観ばかりではなく、「大化の薄葬(はくそう)令」の影響も考えられる。それは、『日本書紀』巻25、大化2(646)年3月22日に、孝徳天皇(こうとく、在位645〜654年)が唐代中国の皇帝が民を戒めて、「昔の葬礼においては、墓所を丘陵に造った。墓のために盛り土や植樹もしなかった。棺は骨を朽ちさせるのに十分であればよい。着物は身体を朽ちさせるのに十分であればよい」、「豪華な葬儀、葬儀のための道具を豪華にする必要はない。豪華な葬儀や豪華な葬具を重んじるのは衆愚の人がすることだ」と言ったと述べた。それに重ねて、「弔うことは隠すことである。人に見られないのがよい」と強調した。そして人民が貧しいのは、支配者がむやみに立派な墓を造るためであるとして、身分に応じた墓の規模、葬儀の形式、使役する人々の数、所要日数、埋葬されるべき場所を定め、大臣から庶民に至るまで、副葬品に金銀の使用を禁じたものだ。しかもそれに背いた場合、一族を処罰すると厳しく定められていた。

「大化の薄葬令」は他にどんな影響を及ぼしたか

確かに、この薄葬令によって、主に近畿地方を中心に、前方後円墳などに見られる巨大墳墓がつくられなくなっていったと言われている。その代わりに、6世紀半ばに伝来した仏教の影響から、墓そのものは巨大墳墓に比べると小規模なものの、それに付随する巨大寺院や霊廟、神社が建立されるようになっていった。
 また、薄葬令が発せられた後に築造されたと推測される前方後円墳の中には、阿武山(あぶやま)古墳(現・大阪市高槻市・茨木市)のように、寸法や広さの点で、規定に整合したものと、西宮(にしのみや)古墳(現・奈良県生駒郡平群町)のように、規定よりも大きなものも存在する。それゆえ、この詔勅は徹底したものではなかったようである。その理由として考古学者の高橋照彦は、用明天皇(在位585?〜580?年)没後の蘇我氏・物部氏の争いや、乙巳(いっし)の変(622年)、壬申(じんしん)の乱(672年)、などのような大小の内乱が国内で勃発したことを理由のひとつとして挙げている。

薄葬があったということは、その反対の厚葬も存在していた

今日で言う「薄葬」とは、被葬者の生前の社会的地位・財力から想定される標準的な葬法よりも意図的に簡略化したもののことを意味する。それゆえ、何らかの経済的・宗教的・文化的理由、または時代の変遷によって、埋葬方法が傍目には「貧弱」と見えたからといって、「薄葬」とは一概に言えない。

そして「薄葬」があったのだから、当然、「厚葬(こうそう)」も存在する。

埋葬施設または外部施設としての「墓」の規模、副葬品の質と量、葬儀そのものと墓づくりにかかる費用と手間などが通常よりもはるかに多いとみなされるもののことだ。厚葬の例としては、近世において、徳川家康(1543〜1616)が「東照大権現」として祀られた栃木県日光市の神社・東照宮がその一例だ。古くは弥生時代中期から古墳時代にかけて全国各地に見られる、土地を治める豪族・王族を埋葬した巨大な墓所内に、高価かつ珍奇な中国製の銅鏡、翡翠(ひすい)や赤瑪瑙(あかめのう)などの玉、鉄製の剣などが遺体とともに、大量に副葬されていたことなどが挙げられる。

1000年以上前の葬儀と現代の葬儀の違い

1000年以上前の日本の葬儀のありようは、現在とは大きく異なっている。ただ言えることは、世界観・価値観・宗教観がどれだけ変化したとしても、死はどんな形であれ、人間を含む全ての生き物に平等に訪れるものだ。そしてある人を失って悲しむこと、そこから立ち直ること、そして後々、その人を思い出して懐かしく思うことができるのは、現代人でも万葉人でも変わらない。

また同時に、葬儀や墓所のありようは時代を色濃く反映するものだ。葬儀や墓は「大事なもの」ではないから簡略化することを決め、生きているうちに「自分」が、または「自分」の死後、残された人が取り計らうことこそ、「大事なもの」と思っていることの裏返しのように思われる。また、「誰も継ぐ人がいない」からと古い墓所が「墓じまい」され、更地になってしまうことを、一概に「孤独」「かわいそう」と第三者が決めてかかることもなすべきではない。100年、200年後の日本において、どのような価値基準・判断が「当たり前」とされているか、我々には想像もつかないことだからである。

参考文献

■小川憲之・木下正俊・佐竹昭広(校注・訳)『萬葉集 2』1972年 小学館
■奥村郁三「大化薄葬令について」上井久義(編)『葬送墓制研究集成 第5巻』 1977/2004年 (81−114頁)名著出版
■宇治谷孟『日本書紀 下 全現代語訳』1988年 講談社
■森謙三「散骨」福田アジオ・新谷尚紀・湯川洋司・神田より子・中込睦子・渡辺欣雄(編)『日本民俗大辞典 上』1999年 (723−724頁)吉川弘文館
■高橋照彦「律令制葬制の成立過程 −『大化薄葬令』の再検討を中心に」『日本史研究』第559号 2008年(1−24頁)日本史研究会
■佐藤弘大『死者のゆくえ』2008年 岩田書院
■森田悌『続日本後紀 上 全現代語訳』2010年 講談社
■山田邦和「厚葬と薄葬」土生田純之(編)『事典 墓の考古学』2013年 (210−211頁)吉川弘文館

ライター

鳥飼かおる

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