核家族化、離婚率の上昇、独居老人の増加、平均寿命の伸び。これらの世の中の流れによって、身寄りのない人や、親族との関係が希薄な人の死が増加している。そのような人の死について、終末期や死後、誰がそれに関する手続きを行うのか。そのようなケースで利用される制度が「成年後見制度」である。今回はその制度について触れてみたい。
そもそも「成年後見制度」とは?
成年後見制度とは「成年後見人」と呼ばれる人物が、認知症や知的・精神障害、その他の病気などで判断能力が低下した人を支援する制度である。
例えば、老人ホームなどの施設への入居手続き、遺産分割や死後の相続に関する手続きが挙げられる。判断能力の低下した人が、不利な契約を結ばされてしまったり、近年増加している高齢者を狙った詐欺などを防止したりするためにも、知っておくべき重要な制度である。
判断能力の低下レベルによって異なる成年後見制度
成年後見制度の種類は判断能力の低下レベルによって、「後見」「補佐」「補助」の3つに分類される。その中でも「後見」が最も判断能力が低下している人を支援するもので、「判断能力が欠けているのが通常の状態の人」と定義される。
制度利用の流れであるが、まず、本人やその家族、住んでいる地域の市町村長などが家庭裁判所に対して「申し立て」を行う。その後、内容が審理され、適すると思われる「成年後見人」が家庭裁判所から選任される。申し立てから、実際「成年後見人」が選任され効力が発生し始めるまで、おおよそ3〜4ヶ月の時間を要する。
成年後見人に選任される方とは?
では、どのような人物が「成年後見人」に選任されるのか。親族の場合もあれば、法律や福祉の専門家、また福祉関係の法人が選ばれる場合もある。
ただ、証券会社での勤務経験がある私の経験上、「口座名義人の成年後見人です」と入ってくる電話の相手のほとんどが、弁護士か司法書士であった。
成年後見制度を利用する上で気をつけておきたいこと
2000年から始まった「成年後見制度」であるが、成年後見人は主に終末期に関する手続きや、本人が大切にしてきた資産の管理を一手に受ける大変重要な役割を担う。制度の利用の増加に伴い、本人の資産の使い込みなどのトラブルも多く発生している。
証券会社に入電する相続関連の電話の中でも「成年後見人の仕事の対応が遅く、相続手続きが思うように進まない」という事例はたくさんある。また私は、調剤薬局での勤務経験があり、そこでは在宅医療を受けている患者さんや、老人ホームに入居している患者さんの薬の調剤を行っていた。そのような場合には薬局と患者さんの間で契約書を交わすことになる。必然的に「成年後見人」と契約手続きを行う機会が多くなるのだが、その中でも、「本人のためにしっかり把握し契約をしよう」という責任感の強い方と弱い方の差が激しいと感じた。
重要な役割であるからこそ、この制度をしっかり理解し、利用していくことが大切だ。