先日九州北部を襲った豪雨では、甚大な被害が出た。見慣れた町が次々と破壊され、家が流され跡形もなくなってしまう様子を中継で見ながら、筆者も背筋の凍る思いであった。我々の生活を一瞬で奪ってしまうような災害は予測がつかず、日頃からの準備が重要であるというのは繰り返し言われていることだが、起こってしまった被害の対処の仕方がわからず途方に暮れてしまうという人も多い。
2011年の東日本大震災後、東北ではお墓の被害に関しての問い合わせが続出した。地震などの災害で壊れてしまったお墓の対処や修復はどうすればいいのだろうか。自然災害に遭ってしまった後の対処を、お墓の被害という視点から見てみよう。
お墓が壊れてしまったら?流されてしまったら?
地震でお墓が倒れて壊れてしまった。豪雨でお墓が流されてしまった。こんなときにまず注意したいのが、基本的に墓地の管理者はお墓の倒壊については責任を負わない、ということだ。土地を所有しているのは墓地の管理者であるが、お墓それ自体を所有しているのは自分自身。したがって、墓石に何か損失が出たときにはその所有者が負担をしなければならないのだ。
ではいざお墓を直したいというとき、何から手を付ければよいのだろうか。まず注意したいのが、災害直後にお墓に行くときの二次災害だ。地震の直後であったら余震、豪雨の直後であったら土砂崩れなど、常に周囲に気を配ろう。お墓の被害状況を見て、墓石にヒビやズレを発見したときには触らないようにする。墓石は見た目以上に重量のある石が使われている。むやみに触って自身が怪我をしてしまわないように注意が必要だ。
被害状況が確認できたら、なるべく早くお墓を購入した石材店などに連絡をしよう。お墓はもともと高価なものでもあり、被害の状況によってその費用は大きく変わる。修繕方法も異なるので、一緒に見積もってもらうと良いだろう。
具体的なお墓の防災って?
壊れてしまったお墓を直すのには費用もかかるし、できれば被害は未然に防ぎたいもの。罹災してしまう前にできる備えはないのだろうか。
災害の被害を受けないお墓にするためには、まず土地選びが関わってくる。特に地震に対しては、墓地のあるところの地層や地盤の状況を調べることが有効だ。地震に強い土地であれば、そのぶん倒壊の危険性も減る。水害なら、近くに氾濫しやすい川はないか、土砂崩れを起こしそうな山の斜面はないか、事前に確認してから墓地の購入を検討しよう。
お墓自体の耐震・免震工事ももちろんできるが、土地がしっかりしていないことには意味がない。出来れば土地の安全を確認しつつ、お墓の基礎工事などにも気を配ると良いだろう。
お墓の保険も検討の価値あり
また、天災が起こったときに備えてのお墓用の保険も存在する。
これは地震や噴火、津波、洪水、土砂崩れといった一通りの天災が補償の範囲となる。これらが原因で墓石が倒壊してしまったり、何か損害があったり場合に修復費用、再購入費用を補償してもらえるものだ。
かつてお墓の保険は日本ではあまり馴染みがなかったが、東日本大震災以降に注目を集めるようになった。費用のことを考えるならこの保険制度をもう一度見直してみるのもいいかもしれない。
災害時の心配事を増やさないためにも
お墓は自分や家族、ご先祖様が亡くなってから入る「もうひとつの家」。災害によってお墓が被害を受けてしまうことは心苦しくもあり、ご先祖様も落ち着かないのでは、と心配になってしまう。
地震大国とも言われる日本では、いつどこでどんな災害が起こるか分からない。そんなときに心配事を増やさないためにも、災害による被害を想定したお墓の設計、防災をしっかりと考えておきたいものだ。
ご先祖様が心穏やかに眠れるように、今回紹介した災害の対処や防災法をもう一度確認して、自分の家のお墓は大丈夫か、ぜひ一度見直してみてはいかがだろうか。