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笑顔多い人生が素晴しいとは限らないし笑顔が良い人生の必要条件ではない

最近の研究によると、笑うことは体の痛みや心臓病を緩和し、延命効果すらあると言われている。例えば、米メリーランド大学における実験で、コメディー映画を観て、15分笑うことで血管が拡張し、血流がよくなる。逆に悲しい映画を観た場合は、血管が収縮することが明らかになった。また、40分笑うと、血中の糖分が早く処理されることから、血糖値が高いまま、とどまることがないとも判明した。従って、日々笑う生活を積み重ねることによって、延命や長寿が結果的に可能となるのだという。

また近年、主にアメリカで実践されている、「アンガーマネージメント」と呼ばれる、イライラや怒りの解決法ではなく、怒りそのもののコントロール方法が広く知られるようになってきた。

笑顔多い人生が素晴しいとは限らないし笑顔が良い人生の必要条件ではない

ストレスやイライラ、怒りなどの負の感情の悪影響は科学的に証明されている

人は自分にとってストレスとなる不愉快な出来事と対峙したとき、まず、イライラする。その反応として、独り言を言ったり、舌打ちを打つ。それで収まらなかったら、フラストレーションの段階となる。その時は、不愉快な出来事を引き起こした当事者に強い口調で詰問するなど、「外」に向かっていく。それでも気持ちが元に戻らないと、怒りに突入する。汚い言葉を吐いたり、大声で怒鳴りつけたりする。怒りはすぐに激怒となりやすく、相手への攻撃がますます強くなる。最終的に怒りは大爆発し、ときに相手を肉体的に傷つけることも辞さなくなってしまう。

しかもイライラや怒りは、「笑顔」とは異なり、慢性的な健康障害を引き起こしてしまうという。人はイライラを覚えると、まず、筋肉が収縮し、硬直してしまう。そして血流が悪くなる。すると脳に酸素が運ばれにくくなったり、動脈に血液を送りにくくなる。その結果、思考力や判断力の低下、高血圧、冠状動脈性心臓病、消化不良、胃潰瘍、頭痛、発疹、感染症への抵抗力低下など、悪影響は枚挙にいとまがない。

怒りを失くすのではなく、コントロールしようとするのがアンガーマネジメント

アンガーマネージメントは、健康に害を及ぼす「怒り」そのものを、「悪」と捉え、自分自身の心のうちに沸き起こる「怒り」そのものをなくそうとすることや、怒りの原因となっていた人や周囲の状況を変える努力を推奨するものでもない。

例えば精神療法家のロナルド・エフロン、パトリシア・S・エフロンは、怒りのスタイルを11パターンに分類し、それらの特徴と具体例、そしてそれに応じたコントロール方法を紹介している。その中で2人は、我々が「怒り」を上手に使うためには、以下のように「怒り」を捉えている。

・人生の中でごく普通のものとして扱われるべきもの
・怒った際の行動は慎重に選ぶ
・制御不能にならないよう、ほどほどに表す
・目標とすべきことは、ただ怒りを表すことではなく、問題を解決すること
・他の人が理解できるように、明確な方法で伝える
・一時的なものであるため、問題が一旦解決されれば、消えうるもの

怒りをコントロールするのではなく、時には解放することもありなのかもしれない

「笑って暮らすも一生、泣いて暮らすも一生」という言葉ではないが、我々は明るくほがらかに、ずっと健康で長生きしたい。そしてむやみやたらに怒ってばかりいる人のことを、手放しで歓迎することはできない。また、自分がもし怒りに任せて言ってしまったものが、結果的に暴言や失言になってしまったとしたら、冷静になれなかった自分への自己嫌悪、そして暴言を吐いたことでもたらされることとなった自身への周囲からの冷遇に対して、後々後悔に苛まれることも少なくない。

とはいえ、我々は常に笑顔で過ごしつつ、アンガーマネージメントを心がけていなければならないのだろうか。現実世界ではありえないことかもしれないが、文学世界の中には、激しい憤怒に身も心も捧げ、最終的にはそれに焼き尽くされてしまったかのような一生を送った人物が描き出され、それが読者の心を強く揺さぶるものも少なくない。例えば、自身も船乗りの経験を有するハーマン・メルヴィル(1819〜1891)が書いた『白鯨』(1851)に登場する、エイハブ船長がそのような人物だ。

アメリカ文学の最高峰のひとつとして知られる『白鯨』は、単なる海洋冒険譚ではない。メルヴィルが深く傾倒していたシェークスピアの『リア王』や『マクベス』のような荘重かつ、大仰で「劇的」な人物造形、人間の高慢の罪とそれによって、神から滅びの罰に至らしめられることを示したキリスト教的倫理観、またはキリスト教以前のギリシア哲学的な思想、そして実際にかつて、「モカ・ディク」という凶暴な大鯨が太平洋にいて、当時の捕鯨船乗組員と激しい戦いを展開していたということなど、海洋生物や航海術、鯨や海にまつわる詳細な記録や伝説・神話などを集めた博物学的要素などが複雑多岐に絡み合い、容易に理解しにくい作品でもある。

ハーマン・メルヴィルが書いた「白鯨」とは

18歳に鯨の銛打ちとして初めて外洋に出てから40年間、ほとんど陸にとどまることなく船乗りとして生きてきたエイハブ船長は「モゥビ・ディク」とあだ名され、恐れられていた白いマッコウクジラとの戦いの際、片脚を噛みちぎられてしまった。その後、彼は有能な船乗りとして世界の海を経巡りつつも、常に「自分の叫び声で目を覚ます」など、白鯨との格闘にまつわる悪夢を見るといった、出口のない苦悩の人生を送っていた。これはまさに、危うく死にかけるような出来事を自分または他人が体験・目撃・直面したことから、抑鬱・錯乱・不眠・摂食障害などを引き起こさせ、それらの症状が、何かのきっかけでかつての恐怖・苦痛を連想させる事物に触れた際、再び、「あの時」のように「再体験」され続ける、PTSD(Posttraumatic Stress Disorder、外傷性ストレス障害)の典型症状だ。罹患者が意識・無意識的に自分の体に刻み付けられてしまっているトラウマ経験から「解放」されるには、たとえ悲惨な体験を有していたとしても、「その出来事は現実には終わっていて、自分は生き抜いたということを知っているという安全な状態」で、最悪のトラウマの出来事を思い出したとしても、「自分はまた、生きられる、自分自身で対処できるという感覚を持つ」ことが肝要であるという。

エイハブの結末は?

   わしは魔人だ、二重に狂った狂人だ。この猛り立つ狂気は、おのれの狂気
   を理解する時のみ鎮まるのだ。

このように吠えるエイハブは、大きな白いマッコウクジラを超え、「おのれのあらゆる思想上、精神上の憤怒」であり、「ある邪悪な魔の執念が凝って顕身したもの」、「筋骨を砕き、脳髄を圧しつぶすすべての陰険な悪魔性」にまでモゥビ・ディクへの負のイメージを高ぶらせ、拡張させつつも、危険な船旅を司る熟練した指揮官としての冷徹さをコインの裏表のように共存させながら生きてきた。そのようなエイハブはとうとう、何十年にも渡って機会を伺っていたモゥビ・ディクと、再戦することになる。

   孤独な生涯のはての孤独の死!おお、わしの最高の偉大はわしの最高の悲し
   みの中にあると感ずるぞ…(略)…呪われた鯨め、わしはきさまに縛りつけ
   られたまま、きさまを追跡し、そして粉々に打ち砕けるのだ。

エイハブはモゥビ・ディクを討ち取って、勝利の雄叫びを上げることは叶わなかった。銛を彼の体に刺すことには成功したが、結局、自ら吐いた呪いの言葉通り、船もろとも、海の藻屑と消えた。

あの時、我慢せずに素直に怒ることができていたら…という後悔

「怒り」の感情は人間関係のみならず、自分自身の心も体も蝕むものだ。そして「笑って死ぬも人生、泣いて死ぬも人生」だから、過去のトラウマを乗り越えて、明るく朗らかに笑って過ごすべきである…それは確かに真実で、それを目指すことは決して悪いことではない。我々の周囲には、決して怒らず、いつも笑顔を絶やさない素敵なお年寄りもたくさんいる。しかし創作上の人物とはいえ、我々は白鯨への憎しみや恨みに囚われ、結果的に自滅したエイハブ船長を「悪」または「不幸」だったと断じることができるだろうか。もちろん、白鯨との無残な出会いさえなかったら、エイハブ自身も、「笑って死ぬ」人生を全うできたかもしれない。だが、冷静に生きながらも、心の奥に激しい怒りを燃やし続け、時に狂熱的に吠え続けていたエイハブには、エイハブなりの「幸せ」や生きている「実感」があったのかもしれない。エイハブほどの悲惨な目に遇うことはなかったにせよ、多くの人は人生の中で、理不尽な出来事に遭遇したにもかかわらず、諦め、我慢して、笑顔で過ごさなければならなかった人も少なくない。時々過去を思い出しては、あの時がまんせず、激しく怒ることができていたら…という後悔に苛まれる場合もある。心の奥に積年のわだかまりを抱えた自分をごまかして、表面的に笑顔やアンガーマネージメントを心がけても、それは逆にその人自身を窮屈な箱に押し込め続けることと同じである。それゆえ、「笑って死ぬも人生、泣いて死ぬも人生」だが、時にはエゴイズムによらず、「正しく怒る」ことを通して、目の前で起こっている、そして「怒り」の後に生じるかもしれない「面倒なこと」から目を背けずに堂々と立ち向かい、自分自身のみならず、自分を取り巻く地域社会のいい歯止め役となることも立派な生き様だと言えるのではないか。

最後に…

「あの人は雷オヤジだったけど、曲がったことが嫌いな、立派な人だった…」と葬儀の折に、送る人から惜しまれながら送られる人、「あの人はいつも怒ってばかりで、最悪だった」と内心、「せいせいした」と思われながら送られる人、まさに人それぞれだが、『白鯨』のエイハブ船長ほどでなくても、「あの人は怒りたい時に怒ることができた、ある意味羨ましい人だった」と送られる人もまた、人の生きた人生の面白さを物語ることだと言える。

参考文献

筑摩世界文學体系:36 メルヴィル、 リア王、 『白鯨』解体、 白鯨―そのヘレニズムとキリスト教思想、 「もう頭にきた!」と思ったときに読む本、 PTSDとトラウマの心理療法―心身統合アプローチの理論と実践、 アンガーマネジメント 11の方法―怒りを上手に解消しよう

ライター

鳥飼かおる(掲載日:2017/07/24 更新日:2023/02/01)

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