相続税の申告期限は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から十ヶ月以内とされている。これは、相続税法上の規定であるので原則変更不可である。もし、何等かの理由で相続税を申告期限までに申告できなかった場合、延滞税や無申告加算税等のペナルティを課せられることとなる。
「自然災害」にあった場合のみ、申告期限が2ヶ月延長
原則変更不可としたが、税務署がやむを得ぬ事情があると認めた場合にのみ、相続税の申告期限を二ヶ月間延長できる。やむを得ぬ事情とは東日本大震災や、先日九州にて発生した集中豪雨のような自然災害だ。他の事情も幾つかあるが、税務署に認めて貰うことは、殆どないと言っていいだろう。では、相続税の申告が遅れてしまう理由として最も多いものはと言えば、それは遺産分割協議が揉めている場合だ。
申告期限を過ぎるとペナルティだけでなく、小規模宅地の特例や配偶者控除の特例も受けられない
遺産分割協議が揉めてしまい、相続税の申告期限までに申告手続きが出来なかったらどうなるか。前述のようなやむを得ぬ事情には該当しないため、延滞税を含めた様々なペナルティを覚悟しなければならない。ここで、遺産分割協議と相続税の関係について触れておくが、相続税には特例と呼ばれる相続税額軽減措置が幾つか設定されている。有名な例だと、小規模宅地等の特例や配偶者控除だ。ポイントとなるのは、遺産分割前の資産には特例の適用は出来ないことだ。遺産分割が出来、相続税の申告をして、初めて特例の適用を受けることが出来るのだ。相続税の申告期限までに遺産分割協議が成立しなかった場合には、特例の適用を受けることは出来ないが、諦めることなかれ、例外が存在する。
ペナルティを避けるためにはどうすればいい?特例を受けるためにはどうすればいい?
遺産分割協議で揉めてしまっても、相続税の申告期限は待ってはくれない。故に、法廷相続分にて相続したことにして、申告期限内に申告と納税を済ませておくと、前述のようなペナルティは避けることが出来る。
そしてもう一つ、「申告期限後三年以内の分割見込書」(相続税法第19条2項他)を相続税申告書に添付すれば、税務署が認めた場合にのみ申告期限後であっても、特例の適用を受けることが出来る。但し、注意して欲しいのは、分割見込書を提出したと言うことは、申告期限から三年以内に遺産分割協議が成立し、遺産の分割が終了する旨、税務署に対して約束していると言うことだ。当然乍ら三年以内に遺産分割協議が成立しなければ、特例の適用を受けることが出来なくなる。
事前の準備が重要!
相続は、大きなお金が動く。誰もが欲しがる資産もあるだろうし、そうなれば家族であろうとも感情的になってしまうのは、ある意味仕方がない。だが、税務署から課せられるペナルティは、連帯責任が基本であり、故に相続人全員にペナルティが課せられる。それを防ぐためには、戦略的な対策を練らねばならない。家族だけでは、返って話が混乱してしまい余計に揉めるだろう。家族だけで対策せず、税理士や弁護士に相談すれば、最善な対策を教えて貰えるはずだ。