遺産相続を巡るトラブルと言えば、遺産分割に関わるものかあるいは遺留分に関わるものが殆どだ。しかし、最近のトラブルの傾向は、必ずしも遺産分割並びに遺留分だけではなくなってきている。筆者の経験だと、トラブルは相続人同士で発生するものであり、部外者と揉めることは皆無だった。相続人とは言っても、言い換えれば身内同士だったので、部外者が入り込める余地がなかったから、当然と言えば当然だ。だが、最近のトラブルは、相続人達とは無関係の部外者が発端となっている。その部外者とは、一部の銀行員なのだ。筆者は、銀行員そのものを批判するつもりはない。あくまでも注意喚起として綴っていくことを明記しておく。
トラブルの原因とされている金融商品とは?
では、トラブルの内容はと言うと、家族が亡くなった直後において、冷静な判断ができない状況の遺族に対し、銀行の営業が高額な金融商品を売りつけ、手数料を稼ぐという内容だ。中にはリスクが高い海外の投資信託を強引に売りつけるケースが増加している。トラブルの原因とされている金融商品は次のとおりだ。
(1)外貨建投資信託
(2)アクティブ型投資信託
(3)一時払い外貨建変額個人年金
(4)一時払い外貨建変額終身保険
(5)外貨建定期預金
トラブルの内容は他にもある。それは「遺言信託」だ。詳細は省略するが、遺言状の書き方のアドバイスから遺言状の保管、相続に係る諸手続きの代理執行、税理士や弁護士の紹介がセットになっているサービスだ。この場合問題となるのは、やはり手数料だ。遺産の総額に比例して、手数料も高額になるので思わぬ出費となる何れにせよ、ご遺族の精神状態が不安定な状況を利用しようとしているのは確かであろう思われる。
問題視されているのは不安定な精神状態に漬け込むこと
ただここで注意して欲しいのは、上記の金融商品並びに遺言信託自体問題は無いことだ。投資信託をするかしないかは、個人の自由であるし、遺言信託においても銀行が行うサービスの内容と手数料について納得がいった場合ならば何も問題は無い。
トラブルとなるのは、冷静な判断ができない状況で、本来ならば不必要な金融商品を購入するよう勧誘する場合、または高額な手数料を要求するようなサービスを提供する契約を勧誘する場合である。
銀行員即ち銀行の営業は、ご遺族が相続した財産を保全し、当該財産を増やす手助けをして貰える存在ではないことを肝に銘じるべきだ。営業はあくまでも自分が勤務する銀行の利益を追求しているだけであり、決してご遺族の味方ではない。勿論良心的な営業も存在するが、確りと見極めてトラブルにならないように注意して欲しい。