海外、とりわけ西洋文化圏には、意匠を凝らした墓石が並び、美術専攻の学生たちが見学に訪れるという墓地が在るようですね。
翻って日本の墓地についてはどうでしょうか。こう言うとお叱りを受けてしまいそうですが、付近の寺院の周辺に拡がる墓地には余り近づこうとはしないが、例えば横浜に遊びに行った時には外人墓地を観光客気分で興味津々の目で見歩いたりする。こうした人は少なくない様に思われます。自分などは完全にこのタイプです。
日本の墓地は陰湿?肝試しに打って付け?
寺院内墓地など従来型の墓地を見ると、お世辞にも美しい景観を有しているとは言えないですよね。新聞・雑誌などのメディアにおいても、「日本の墓地には、何処か陰湿なイメージが付きまとう」とか、「肝試しには打って付けのスポット」などと書かれた投稿や随想に出会う事があります。
やはり日本に於いては、墓地は忌避施設としての色合いが濃いようです。墓地が近くにあるアパートでは、賃貸料が通常の相場より下がるという事実も、こうした状況を裏付けています。そんな訳で墓地の周囲に高い外壁を巡らすなどして人々の視界から遮断するような対策を講じているケースもあるのですが、外壁の無味乾燥さもさる事ながら、木製の塔婆が外壁の上端からはみ出てしまっているなど、やや見苦しい光景に出くわす事も少なくないようです。
こうした現状を見据え、墓地の景観について調査・研究し、改善点や工夫すべき点を見出そうとする団体が、幾つか活動しているようですね。中々立派なリポートを発表し、とても参考になります。超高齢化社会を迎えた日本では墓地が不足しているという社会問題が深刻化しつつあり、今後の活躍を期待したい処です。
日本の墓地墓石もかわりつつある
さて、墓地の景観に美的センスを求める事に対しては、当然ながら賛否両論あると思います。しかし、葬儀市場が激動状態にあるのを機に、”見た目”へのこだわりも芽生えている様です。
具体的にはデザイン墓石の急速な需要増加が挙げられると思います。生前における故人の趣味や想いなどを墓石に反映させたいとの遺族らの希望の高まりが、この背景に在る様です。更に、墓石デザイナーなる専門家がいるという事実にも少々驚きました。
墓石のタイプを見てみますと、台石の上に細長い棹石を据える伝統的な「和型」よりも、背の低い石を用いる「洋型」の方がデザイン的に自由度が効くとの事です。「またしても西洋文化にやられた」という感じですが、墓石デザイナーの方々にエールを送りたい処です。日本の墓地や霊園にも、美術専攻の学生たちが見学に訪れる・・・。近い将来、こんな日がやって来ると良いですね。