結婚した後で必ずと言って良い位、大きな問題となるのは、義理の親族との関係であろう。特に嫁姑との関係は今も昔も非常にデリケートな状況になり易い。勿論、円満な関係を築いている方も多い故に人それぞれなのだろう。しかし、義理の親族関係について相続が絡むと殆どの場合、円満な関係とは言えなくなってしまう。
今回は、相続と義理の親族との関係と、問題が起きた場合の対処について綴ってみたい。
義理の母の死後、義理の兄から突然の退去命令
以前筆者が相談を受けた案件で、最悪の結果になってしまった方が居た。事前相談ではなく、事後相談だったためになすすべが無く、法的にもどうにもならなかった。
相談に来た方を仮にA子さんとするが、A子さんは大学卒業直後に結婚された。結婚して数年後にご主人が事故で急逝し、その為子供も居なかった。故に以後数十年間ご主人の母親、つまり義理の母と二人でご主人の実家で生活してきたという。ご主人の父、即ち義理の父は、結婚時には既に故人となっていた。
問題が発生したのは、A子さんの義理の母が脳卒中で倒れてからだった。結局、最後まで意識を取り戻すことは無く、そのまま亡くなった。A子さんは、ご主人が急逝した直後から、義理の母が亡くなるまでの間、義理の母の身の回りの世話をしていたのだ。だが、義理の母が亡くなった直後に、ご主人の実の兄(義理の兄)が来て、この家を相続したから、相続人ではない貴方(A子さん)は至急出て行って欲しいと言ってきたのだ。当然、A子さんにとっては納得できる話しではない。血の繋がった実母ではなく、義理とはいえ赤の他人の面倒を長く見てきたにも関わらず、長く暮らした家を出ていかなくてはならない。義理と人情、何とかならないかとA子さんは泣きながら言っていた。
相続権がないとどうにもならない!
結論は、A子さんは家を出なくてはならなくなったのだ。理由は相続権が無いからだ。当然遺留分は認められない。ご主人の実家であり、ご主人の親族についてA子さんには、相続権は無いのだ。この話しが、A子さんの実家に関する相続ならば、A子さんには相続権が有るので何も問題は無かった。
では、A子さんはどうすれば問題を解決できたのだろうか。一般的な方法として、義理の母に遺言状を作成して貰い、実家について相続させる旨の一文を入れて貰うことだ。他の相続人達について、遺留分が発生するために慎重に作成する必要があるが、家を出ていかなくなる必要は無くなる。また、最も確実な方法は義理の母親と養子縁組をすることだ。養子縁組をすれば、実子つまり義理の母が法的に実の母となることで、相続権が発生するし、必然的に遺留分も発生することとなる。
他にも方法はあるが、何よりも事前に問題を把握しておくことが一番大切であり、専門家に相談し、対策を練っておけば良い。義理と人情は、確かに大切ではあるが、法律には何の関係も無い。問題を防ぐためには、手間を惜しんではならない。何か有ってからでは遅いのだ。