バブル経済の時点では、都市部並みの価格で売買されていた別荘地。バブルが弾け、リーマンショックを経た現在では、かつての面影は無きに等しい。
今回は、別荘地に関係した相続税の問題について綴ってみたい。
別荘地は倍率方式で評価するのが一般的
相続税における土地の評価(価格の決定)は、路線価方式と倍率方式の二つである。通常だと、市街地を中心とした殆どの土地は路線価方式、山林や田畑だと倍率方式が用いられる。
路線価方式とは、毎年7月頃に国税庁が国道・県道・市道に面した土地の価格を決定し、それに基づいて土地を評価する。目安としては、土地の売買価格の70~80%だ。倍率方式とは、各市町村が決定した固定資産税評価額に、国税庁が決定した倍率を乗じて評価するが、路線価方式と同様で売買価格よりも低い価格で評価される。
別荘地の場合、殆どが都市部ではなく郊外の山間部や、海に面した地域に存在するので、倍率方式で評価することが多い。別荘地と相続税に何の関係があるのかというと、土地の売買価格と相続税の土地評価額が、逆転することがあるのだ。逆転した場合、何が問題になるのかと言うと、相続税が増加する可能性がでてくるからだ。
自然災害などで時価下落しても評価には反映されない
相続税は、基本的には上記の評価方法による評価額か、時価(売買価格とほぼ同一と考えて良い)により計算し、どちらか低い価格で申告することとされている。評価方法による評価額の場合、何よりも国税庁や市町村が決定した価格に基づいているために問題は無い。しかし、時価ともなるとそうはいかない。
今年4月に熊本で発生した地震や、8月の台風10号による東北地方や、北海道での水害等の自然災害に被災した地域では、土地の時価が大幅に下落する。また、地域によって過疎化や少子高齢化により土地そのものの需要減により、時価が下落する。上記の評価方法だと、ある程度景気の状況は反映されるが、自然災害のような突発的な事象や、過疎化と言ったあまり表面化していない事象は反映されない。故に、正確な時価の算定が困難となったことにより、本来ならば時価よりも低額となるはずの評価額が、時価よりも高額となり、高額となった評価額で相続税を計算しなければならなくなる。
不動産鑑定士に依頼をするのが最善
この問題を解決するには、不動産鑑定士に別荘地にある当該土地の評価を依頼し、正確な時価を決定して貰うことがベストだ。不動産鑑定士は、土地や建物の時価評価の専門家であり、中立な立場から公平かつ正確に時価を算定できるし、税務署にも正当な時価として認めて貰える。不動産鑑定士の数はかなり少なく、信頼できるか否かの問題もあるので、直接依頼するのではなく、税理士にその旨を相談し、税理士から不動産鑑定士を紹介して貰う方が無駄な手間を省けるし、効率よく行動できる。余裕を持った相続税対策をするには、その道の専門家に事前に相談するのが最善の方法なのだ。