相続税で一番頭の痛い問題は遺産分割であろう。節税対策も厄介な問題だ。
しかし、事前に専門家に相談しつつ、的確で確実な対策を練っておけば、意外と恙なく解決することが多い。あくまでも、自分達家族で解決しようとせず、税理士や弁護士に相談して一緒に解決すれば良いのだ。
だが、専門家であっても全く解決できない最後の問題がある。それは、相続税の納税資金の調達だ。
現状厳しい物納と延納
こればかりは、税理士や弁護士であっても円満に解決できるか否かは、非常に困難な面があるだろう。何故ならば、ご遺族の金策にまで意見を述べる権限は無いからだ。
日本において、統計上では相続財産の殆どは土地等の不動産である。そして、相続税は現金一括納付が原則だ。物納や延納という手もあるが、最近の例では認められることは少なくなってきている。
平成7年度の国税庁の統計によれば、物納が認められた件数は、9185件で延納だと20622件だった。平成24年度だと、物納が認められた件数は、205件で延納だと1282件であり、大幅に減少している。物納と延納は、相続人が税務署に申請した後、税務署が申請を認め許可するか否かを決定する。許可が下りなければ、当然のこととして現金一括納付となる。
解決策は生命保険の加入と資産の売却
不動産は、即座に現金化するのが困難だ。景気にも左右されるし、立地条件によっては長期間売却できずに塩漬けになってしまう。相続税が確定し、さあ納付だとなった時点で納付すべき現金が無くて慌ててしまい、金策に苦労しているご遺族を多く見てきた。
そういった苦労を回避する方法を説明しよう。一つ目は生命保険の加入。二つ目は資産の売却だ。
生命保険の加入は、節税対策にも利用できるが、納税資金の調達にも役立つ。受取人を相続人にしてしまえば、受け取った保険金がそのまま納税資金となるからだ。
次に資産の売却だ。不動産や車、絵画等の財産を売却して現金化する。現金が無いならば財産を売却して現金化すれば良い。不動産については、上記のとおり即座に現金化するのが困難な場合があるので、売却する時期に注意が必要となる。ここで更に注意が必要なのは、不動産を売却した場合には、譲渡所得として所得税が課税されることだ。状況によっては、所得税が軽減される特例の適用を受けることができる可能性がある。詳細は税理士と相談して欲しい。
相続税の納付資金の調達を考えておくことも終活の一つ
遺産分割、節税対策、そして納税資金の調達。
非常に頭の痛くなる問題ばかりではあるが、避けて通ることはできない。問題を先送りせず、専門家を交えて事前にしっかりと対策を練っておけば苦労もなくなるだろう。より良い終活のためには、行動あるのみだ。