一昔前までのお葬式といえば、初日にお通夜、翌日に告別式、火葬といった流れが一般的だった。仏式であれば更に、七日後に初七日法要を行う。
しかし現代では都心への人口集中と核家族化が進み、親族と共に、あるいは生まれ育った地方で生活している人は少なくなってきている。
そんななか、それぞれの血族に馴染み深い寺や故郷など、各地で行われるお通夜に参列することや、数日にわたる葬儀への出席が難しい人が増えている。
ましてや血縁ではなく、過去にお世話になった人や友人となると、遠く離れた場所で葬儀が行われることも多々ある。
さらに少子高齢化の影響で、金銭的に大規模な式を挙げることが厳しい家庭もある。
新たに登場した葬儀形式 「一日葬」
こういった時代の変化が、葬儀にどんな変化をもたらしたか。それは低価格かつ時間的拘束の縛りが緩い「一日葬」という葬儀形式の台頭である。
ちなみに一日葬とはお通夜を行わず、火葬当日に縁のあった人たちを呼び、告別式を行う、文字通り一日で終わる葬儀の形式だ。また、初七日法要も、七日後に再度集まるとなると負担が増すため、告別式の最中にすませてしまう「繰り上げ初七日・式中初七日」が可能だ。
この形式は通常の葬儀と違い、大がかりな準備は不要だ。それでいて、火葬のみの葬儀と違い、ゆったりと故人との別れを惜しむことができる。通常の葬儀だと100万円から200万円ほどの費用が相場であることに対し、一日葬はお料理や香典返しなどの変動費を含めなければ40万円以下で行うこともでき、経済的にも大変メリットのある葬儀と言える。
親族以外を招きづらい「一日葬」
一方で、一日葬にはデメリットもある。
最も大きいのは、親族以外の会葬者を呼びにくいということだ。会葬者とは葬儀へ出席する人のことで、首都圏で葬儀をあげる場合、以前ほど慣習として残ってはいないが、親族以外の会葬者はお通夜に参列することが一般的だった。
一日葬を行うとなると、お通夜がなくなってしまうため、家族以外の会葬者が葬儀に参列するよう招くことが難しくなる。
さらに、この葬儀形態は最近になってできたものであり、昔からの慣習に乗っ取ったものではない。仏式の葬儀におけるお経は、お通夜、葬儀告別式と一連の流れがあることに本儀がある。このことにより、菩提寺から一日葬という葬儀形式の理解を得られず、難儀することもある。
形式よりも大事なのは後悔なく葬儀をあげること
大切な人を送り出す儀式として「葬儀」を考える場合、穏やかに送り出し、安らかに眠ってほしいと願う遺族の気持ちの方が、どのような葬儀をあげるかということよりも重要だ。
さらに、残された人間が、また明日から前に進むために葬儀をあげると考えるなら、一日葬のデメリットの部分よりも、生きている人々の時間的・金銭的余裕に繋がるメリットの有効性が見てとれる。
昔からの風習と日本の生活文化が変わりつつある今、葬儀の形式も現代のニーズにあわせて変わってきたことは間違いないだろう。