「散骨」とは何か―簡単に言うと遺体を火葬した後、遺骨を粉末状にし灰のような状態にして空や海に撒くことです。
ドラマや映画などで主人公、あるいは登場人物が亡くなった後その故人の希望で散骨するという描写を目にしたことも少なからずいらっしゃるのではないでしょうか。
場合によっては散骨は犯罪になるので注意!
さて、冒頭でわざわざ「粉末状にし」「灰のような状態にし」と記したのにはもちろん理由があります。
遺骨を骨の形状を残したままに「散骨」することは、刑法に違反する犯罪行為であり、刑法190条の遺骨遺棄罪にあたります。ドラマや映画で「散骨」に関するシーンを見たことがある方、「散骨」という言葉を知っている方のうちどれぐらいの方が、この「遺骨遺棄罪」を知っているものなのかはわかりません。
筆者自身、今回初めてそのような刑法があることを知りました。しかし、例え法律に明るくなかったとしても、他人が見てそれが人の骨であるとわかる様な状態で「散骨」を行うことが「よくない」ことである、というのは多くの人の共通認識だと言えるのではないでしょうか。
突然「人の骨」が撒かれている、落ちているのを見つけてしまった発見者は当然驚いたり、気味悪く思うことでしょう。あるいは何かの事件かもしれない、と心配するかもしれません。そのような状況は避けられるのであればやはり避けるべきです。故人の願いを尊重し散骨するつもりが、他の誰かに不快な思いをさせてしまったり、はたまた散骨者自身が法律違反で捕まってしまったりすることのないように出来ること―まずは、現実的な約束事を今一度確認することか必要であると思います。
情緒的に捉えられている散骨
なんだかのっけから「刑法」「遺骨遺棄罪」と難しい話を書き連ねてしまいましたが、散骨にまつわる素敵な話を。
冒頭でドラマや映画などで…と述べましたが、「散骨」という話題を扱った作品の中で筆者の記憶に一番残っている作品があります。もしかしたら同じ作品を思い浮かべた方もいらっしゃるのではないでしょうか。それは原作が大ヒットし映画化・ドラマ化もされた「世界の中心で、愛をさけぶ」です。
白血病で亡くなった主人公自身の散骨についても描かれていますが、主人公の恋人の祖父の散骨についての描写も印象的です。その祖父は「結婚」という形で結ばれることは出来なかった、かつての恋人の墓から骨を盗み、自分の死後、その恋人の骨と一緒に撒いて欲しいというのです。最初に断っておきますが、他人の墓を暴くなどという行為は、もちろん犯罪です。それは理解した上で、それでも筆者にはこのシーンがとても印象深く、「素敵な」シーンとして記憶に残りました。
そしてこの作品の印象が強いせいか、筆者は「散骨」という言葉について、どこかロマンチックなイメージを頂いております。更にこの作品に限らずともドラマや映画で「散骨」という描写がなされるとき、それは情緒的に描かれることが多いように思います。
故人や遺族が望んた時にこうした「散骨」という選択肢を選べるようにするためにも、冒頭で述べたような約束事はきちんと把握しそして守らなければならないのですね。