そう言われて、あなたが思い浮かべるのはどんなお饅頭だろうか。
筆者が知っていたのは、小判形で真ん中に茶色い焼印のある薄皮の饅頭だった。
子供の頃はお葬式があれば必ずこれが出され、1人で食べるのはちょっと大きいこの饅頭を家族で切り分けて食べた思い出がある。
しかし、日本国内では色も形も味も異なるいろいろな葬式饅頭が作られている。
あなたがこの中で一番馴染があるのはどの饅頭だろうか。
春日饅頭
小判型の白い饅頭で、上に柏の葉や紅葉などを模した茶色の焼き印が押されている。
主に関東地方を中心に東北地方、甲信越地方など幅広く食べられており、小麦粉でできた皮の中には主にこしあんがぎっしり詰まっている。
「春日野饅頭」「焼きまんじゅう」「しのぶ饅頭」などと呼ばれる事もある。
一般的に手のひらに乗るくらいからもう少し大きめのサイズで作られる事が多い。
だが、地域や店によってはかなり大きく作るところもあり、青森県や埼玉県には直径30cm以上のものも存在する。
青白饅頭
小ぶりの丸い白と緑の饅頭のセット。
緑色は主に抹茶などで色づけされている。
小麦粉の饅頭で、中身はこしあんの場合とつぶあんの場合がある。
関東地方を中心に、広い地域で食べられている。
黄白薯蕷饅頭
慶事の紅白饅頭に対し、弔事の際に色を変え黄・白セットで作られる饅頭。
「薯蕷」は山芋や大和芋などの芋で作られた饅頭の意味で、「上用」とされる場合もある。
饅頭の生地には米粉や小麦粉を芋で練ったものが使われ、それにこしあんを包んでふっくらと蒸し上げる上品な饅頭である。
主に京都や大阪など近畿地方を中心に食べられている。
中華まんじゅう 中花まんじゅう
主に北海道から東北地方で食べられている饅頭で、ひき肉の餡の入ったいわゆる「中華まん」とは全くの別物である。
形状は半月型で、茶色い小麦粉の生地(中花種)に餡子を包んで作られる。
由来はカステラなどと同時期に西洋から伝来した菓子「ちうか」とされ、かつては江戸の街でも同様の物が広く食べられていた。
同じ「中花種」を使ったお菓子にはおなじみのどら焼きや、生地に求肥をはさんで鮎の形に仕上げた「若鮎(鮎焼き)」などがある。
岡山では葬式パン?
今回は、お葬式に出される饅頭について調べたが、お住まいの地域によっては「葬式饅頭」そのものに馴染がないという方もいるだろう。
たとえば岡山県の一部では葬式に菓子パンが供される習慣があり、これは元々葬式に餅をついていたが、餅をつくのが大変だという理由で近代になって手軽な菓子パンに変えられたものである。
さらにお葬式には白い落雁や上生菓子を用いることも多く、葬式饅頭を出す習慣のある地域でも必ずしも饅頭がなければお葬式が成り立たないわけではない。
また近年では従来の慣習にとらわれず、故人の好きだったものやお菓子以外の物が引き出物・香典返しとされる場合も多く、「葬式には饅頭」とは限らなくなっている。
葬式饅頭も大切な日本の食文化の一つ。
故人を偲ぶ伝統的なしきたりとして、今後守っていきたいものである。