古来、人は音楽によって、気持ちを高揚させたりリラックスさせたりしてきました。
コンサートやライヴが大イベントになるように、音楽は大勢の人の気分をダイレクトに盛り上げ、心地良い一体感を抱かせてくれます。
人が集まる催しに、音楽は不可欠といっていいでしょう。
学校の各種式典では校歌が斉唱されて全体調和とメンバーシップの心が生じ、スポーツの国際試合ではそれぞれの国の国歌が演奏されると、厳かな気持ちと共に選手とサポーターとの強い一体感を醸し出します。
音楽は式典で流れを作っていくときの大事なきっかけなのです。
仏教、キリスト教、どちらの葬儀でも音楽はつきもの
それはしめやかな葬儀であっても例外ではありません。お寺での葬儀では音楽を流したりはしませんが、読経には鳴物が入り、リズムは整っています。
さらに斎場での式であれば、BGMという形で焼香の後などにインストルメンタルの曲やクラシック音楽などをボリュームを抑えてホール等で流しています。
美しいメロディが暗く沈みがちな心をそっと癒してくれるものです。
キリスト教の葬儀は、式じたいが神への礼拝ですから、聖歌あるいは讃美歌を皆で歌い、歌うことが祈りにつながります。
信者でなくても葬儀に参列すると楽譜が配られますので、それらを見ながら会葬者と共に歌うことで、心が清められていく思いがします。パイプオルガンの音色もいいものです。
家族葬を音楽葬に演出!
近頃多くなってきた家族葬で、音楽を中心とした「音楽葬」という演出も可能だそうです。
故人の好きな曲をBGMとして流す、あるいは、ピアニストあるいは小規模の楽団を入れて10曲程度の演奏をしてもらう合間に、故人をしのぶスピーチや、読経やお祈り、焼香や献花のタイミングなどを入れてもらうスタイルだそうです。
自由度が高くなればなるほど、葬儀の手作り感やオリジナリティは増えていきますので、記憶に残る葬儀になると思います。ご親族などに納得していただけるようでしたら、こういう創意工夫のある手作り葬儀でお見送りするのもよいのではないでしょうか。
「この曲を聴くと、あの人を思い出すな」という記憶が残ります
先日、ある方のお葬式に行きました。
斎場での仏式葬儀だったのですが、故人の遺言で「マイウェイ」という曲が、出棺時に流れました。英語バージョンの曲でしたが、波乱万丈だった故人の人生を偲ばせる、心に染みる選曲でした。
しきたりにのっとった仏式であっても、もう少し葬儀に音楽というものを効かせていってもよいのではないかなと個人的には思っています。なにしろ、音楽はその場にいる人たちの一体感を醸し出しますし、理屈ではなく感情に働きかけてくるものだからです。音楽が好きだった故人を送る場合は、(この曲を聴くとあの人を思い出すな……)という記憶を残してあげるのも、しみじみとしてよいものではないでしょうか。