最近、お墓の代わりに納骨堂を利用する方が増えているようです。
どうして今、納骨堂なのでしょうか。
単純にいえば、お墓よりも費用が安く、自分一人や夫婦だけでの利用も可能であるために、墓地承継問題を気にしなくても良いからです。
こうした納骨堂利用者数の増加との先後を断定することはできませんが、しかし現在の納骨堂も、その潮流にあわせて変化しつつあります。そこで今回は、変わりつつある納骨堂の実態をご紹介します。
立体駐車場からヒントを得た立体納骨堂!
みなさんは、納骨堂といえばどのような内部のイメージを想像するでしょうか。
個室であっても、広間であっても、簡易仏壇が設置されているイメージが浮かぶかと思います。この光景はCMでもお馴染みでしょう。
しかし、現在の納骨堂では、遺骨と仏壇をセットにしてワンスペース、という形式からまず変わっています。その代表的な例が「自動搬送式納骨堂(別名:立体式納骨堂)」といわれているシステムです。
「立体式」という文字から、立体駐車場を想像した方もいらっしゃるでしょう。まさしく、この方式は立体駐車場からヒントを得ています。参拝者がくると、コンピュータが地下などに納められた骨壺の中から、正しいものを選んで、地上にある参拝室まで搬送します。参拝室には仏壇など、一式の道具が揃えられており、モニターには故人の遺影が映し出されるところまであります。
「自動搬送式」のシステムが採用される理由としては、参拝室は一室でよいため、設備費が安く抑えられます。
同時に、遺骨自体は普段は一カ所にまとめて集めておけるため、場所をとらない、などが挙げられます。
もちろんこうしたメリットは、納骨堂の格安な値段設定に反映されています。しかし、こうした管理体制を疑問に思う方もいらっしゃるでしょう。
冷淡なイメージになりがちな納骨堂
私たちにとって、自分が入るであろうお墓は生まれたときから一族のお墓として存在しています。
また、お墓は親族全体の血縁的紐帯を象徴する一種の道具でもあります。
こうした考え方からすれば、遺骨をコンピュータで一括管理をしながらも、遺骨自体は血族ごとに集められているわけでもなく、孤独にあるというパラドキシカルな状態は、SFで描かれるような冷淡な管理社会を想起させるかもしれません。
今後増えていくであろう納骨堂利用者
しかし、お墓の管理問題などが現実に表面化している今の日本においては、私たちも、今回の納骨堂のような管理と妥協せざるを得ません。
だからといって私たちに故人を偲ぶ心が不必要なわけではなく、むしろ忘れられがちだからこそ、こうした思いは強く保持すべきでしょう。
また納骨堂を管理する側においても、納骨堂が単なる巨大な骨壺として鎮座することのないように、宗派で違う参拝様式や道具に配慮するなど、様々な工夫を凝らしています。
お墓を末代まで管理したり、新しくお墓を建てたりすることが難しくなっているこの時代に、「納骨堂」という選択肢について、今一度現実味を持って考える必要がありそうです。