葬儀などの法要や、仏前結婚式などで私たちがお世話になるお坊さん。お坊さんと言えば、丸めた頭で読経をしながら木魚を叩いて…と、専らお寺仕事に従事しているイメージだが、いま、その殆どが兼業をされていることをご存知だろうか。
家族葬や直葬など、葬儀の低価格化が進む
文化庁調べによる「仏教系で教師として認められている人の数」を「日本の人口総数」で割ると、単純計算で約0.3パーセント。実際お坊さんとして働いている方はそこからさらに少ないと考えられるから、お坊さんというのは珍しい職業にあたるだろう。さらに公務員に義務付けられている職務専念義務も、僧侶と神官に限っては例外になるから、その特殊性も明らかだ。
しかし近年、葬儀に対する人々の意識の変化や、格安価格の家族葬・直葬の増加などから、全国的に葬儀にかける費用は減少傾向にある。
こういった背景を元に「坊主丸儲け」などと言われた時代はとうに過ぎ去り、お坊さんとしての収入だけでは立ち行かないのが現状だ。今回は、そんな現代のお坊さんの兼業事情についてお話ししたいと思う。
学校の教師も兼ねるお坊さん
まず、お坊さんの兼業としてメジャーなものに学校教師がある。
当コラムをお読みの方の中にも、学校時代、お坊さんが先生だったという方もおられるのではないだろうか。
公立学校の場合はお坊さんも公務員となるため公務優先が条件となるが、お寺仕事と重なる場合は代理のお坊さんに法要をお願いするなどして工面しているそうだ。お坊さんは教えを説く職業でもあるから、同じ教えるという点では適しているのかもしれない。
幼稚園を経営するお坊さん
次に、お寺併設の幼稚園経営がある。
これも比較的メジャーな兼業で、幼稚園における私立が約8割の日本では、仏教系幼稚園もそう少なくない。園によっては給食に精進料理が出され、子どもたちに日本古来の穀物と野菜を中心にした食事をしてもらいたいという精神に今後注目が集まりそうだ。
布教も兼ねたお寺によるイベント活動
さらに、現代のお坊さんらしい兼業として、寺イベントがある。
コンサル会社を介して野外コンサートやヨガ教室を開いたり、カフェとしてお寺を開放、そこが男女の出会いの場ともなることもある。イベントであれば、普段お寺に縁のない方も気軽に赴くことが可能だ。現在寺イベントは実に多岐に渡り、お寺の存続や仏教の教えを広めようとする努力が見て取れる。少しでもお寺を身近なものとしてもらい、日本人に広まりつつある信仰心の薄れに歯止めをかけられるか。
お坊さんの派遣サービス
最後に、昨今のお寺の実情を如実に現す兼業として、派遣がある。その名の通り、お坊さんの派遣サービスだ。
なんと今や、お坊さんも派遣会社に登録する時代。檀家を持たない方、特に宗派を持たない方などが利用するこの制度、非常に格安である。お寺の存続に尽力する傍ら、このような形態が今後のお坊さんのあり方として増えていくのかもしれないと思うと一抹の寂しさを感じる。
どうやら、仏教界にも世間の厳しい風が吹いているらしい。