大切な人が亡くなったことを伝えるとき、皆さんはどのように表現するだろうか。ニュース報道などでは「死去」が使われるが、「死」というのは即物的な言葉であるため、聞く人次第では衝撃が伴うかもしれない。死を表現するとき、どんな言葉が相応しいだろうか。
鬼籍に入る、他界、冥土へ旅立つ
「鬼籍に入る」という日本語を初めて目にしたときは、人の戸籍ではなくて、あの世の鬼が持つという戸籍に入るのかと思い、そのイメージに感心した覚えがある。
「他界する」「冥途へ旅立つ」というのも「別世界に移る」という観点の表現である。冥界、冥土、冥府という単語は霊魂が行くとされている世界を表現し、冥という字からややダークな雰囲気を感じるが、旅立ちという響きがロマンチックといえなくもない。
一方で、「泉下の客になる」という表現は、死後の世界を黄泉(よみ)の国などとも言うが、その黄泉世界に招かれたという言い方である。地下には黄泉の国があり、そこを訪ねているという、ややファンタジックな表現でもある。
逝去、不帰の客になる、天寿を全う、永眠、人生の幕を下ろす
「逝去」もよく使われる表現だが、現世から去ったという点を強調する慣用句は他にも多々ある。
「不帰の客になる」というのは、残された人たちの悲しさが伝わってくる切ない表現だ。逝ってしまって帰らないことを嘆く心情が表れている。
一方で、「天寿を全うする」「永眠する」「人生の幕を下ろす」などは、与えられていた人生という時間を立派に全うしたというエンディングを強調している。
最近の俗語的な言い回しでは、「星になる」「風になる」などの自然への回帰というのもあるだろう。
英語で死はどう表現するか
英語だと、映画の会話などでもよく聞くのが「pass away」だ。直訳すると(通り過ぎる)だが、“He passed away”と言うと、彼が通り過ぎてしまうわけで、「もういない」というニュアンスが出ている。その他は以下の通りだ。
・expire(有効期限が切れる)
・go to meet his/her maker(神様に会いに行く)
・pass over to the other side(別サイドへ移る)
・go to a better worldよい世界へ行く)
・go to his/her rest in peace(安らかな眠りの世界へ行く)
言葉ひとつで意味が全く異なる死の表現
この世にあるからには、いつかは必ず巡ってきてしまう悲しい別れだから、それぞれの言語で、悲しみを和らげるための言い回しがされている。言葉から、残された方々への気遣いと故人への想いを感じるのは間違いないだろう。