先日、新築のお宅にお邪魔する機会がありました。
東京の私鉄沿線で、急行停車駅から徒歩15分という場所にある家です。
ベージュ色の外壁の二階建てで、小さな裏庭があり、玄関横には駐車スペースが取られている外観です。
小じんまりとした玄関口から入った室内で一番目立っていたのは、オープンキッチンのリビングダイニングスペースで、採光もよく、家族の団らんがイメージできるような間取りとインテリアでした。
変わりつつある仏壇
今どきの戸建住宅といっていいでしょう。リビングダイニングスペースの隣に、引き戸で仕切られた六畳の客間があり、箪笥の上に茶色い木箱がありました。小さなミカン箱くらいのサイズで、正面に二つ取っ手が付いています。いったい何かと尋ねると、「仏壇」との答えでした。
私自身は、仏壇というと、日本間の壁の中に収納されている大きなもので、色といえば黒×金の立派なものという概念がありました。
仏壇の前には分厚い座布団や供物が常置され、鴨居の上には遺影がズラリ……というイメージです。生家が北関東なので、その地域のスタイルが刷り込まれていたのです。
貴方なら仏壇のためだけのスペースを用意しますか?
新築の家の小さなボックス状の仏壇を見て、その簡素さに驚きました。
言わずもがなですが、東京では家自体が狭く、先祖代々の土地を相続したとか、富豪やセレブでない限り、広々とした居住スペースを好き放題に使える人はそうそうおりません。
狭い敷地でいかに快適に暮らすかをデザインするのが、主婦の腕の見せ所という部分もあります。家族の暮らしにとって間取りとインテリアは一番大事なポイントですので、仏壇に大きなスペースが割けないのは仕方がないことです。
ボックス状の仏壇の中を、お願いして見せてもらいました。ご位牌は仏壇と同じくウォルナット素材とのことで、赤茶色の木目が見えるものでした。仏具も白地にピンクの模様が入った丸い陶器で、かわいらしい印象です。
「今はクリスタルの仏具なんていうのもあるのよ」とその仏壇の持ち主は言っていました。
彼女は私と同郷の出です。都会の暮らしに溶け込みつつ、新居でも何とかご先祖を祀っている様子に、逞しさと心強さを感じました。故人としても、賑やかな娘の生活の場に共に居られて、幸せなのではないかなと思いながらウォルナットのご位牌に手を合わせました。
環境に最適化されてきた仏壇
何でもそうでしょうが、環境に合わないと、廃れていくものです。
モダン仏壇というのは、今どきの都会型住環境にデザインされたものなので、今後、こういう仏壇でのご供養を続ける方も増えてくるのでしょうね。何事も、選択肢がバラエティに富んでいるというのは、豊かでよいことだと私は思います。