「数珠は自分で買うものではない、人から贈られるものだよ」…そう祖母から言われて、社会人になった頃にプレゼントされました。
なぜ数珠は贈られるものなの?この問いに祖母は答えられませんでした。
ずっとそのままにしてきた小さな謎ですが、今回ふと思い出し、数珠についていろいろと調べてみました。
念仏を読む回数を数える目的だったお数珠
数珠は、六世紀半ばに仏教と共に日本へ伝来したそうです。
金や銀をはじめとする高価な材料で作られた数珠は、一部の僧侶や貴族しか使われませんでした。その後、仏教が民衆に広まる鎌倉時代になると、数珠は一般庶民にも浸透しました。さらに、仏教が幕府の政策とされた江戸時代を経て、現代に至るまでに数珠は広く普及してきました。
数珠の本来の用途は、念仏を読む回数を数えることです。
そして数珠を持ち仏を拝むことが仏教徒としての基本であり、仏と向き合う時の大切な法具です。宗派によって数珠の形状はちがいますが、どの宗派でも数珠は重んじられてきました。また、お葬式ではもちろん魔除け・厄除けのお守りとしての役割もあるそうです。ですから、亡くなった方の数珠は、死後も必要なものとして荼毘にふす前にそのお棺の中に入れます。このように仏教徒が多い日本の中で、数珠は仏との結びつきを表す大切なものとして扱われてきました。
嫁入り道具として持たせるお数珠
数珠について調べて行く中で、「嫁ぐ子に忘れず持たす、数珠一つ」という言葉にめぐり着きました。数珠は、親が子の幸せを願うお守りとして、またたしなみとして贈られてきた物のようです。しかし、これは地域などによって違いがあるようですし、今の時代では嫁入り道具として持たせられることも少なくなってきているようです。ですから、自分で好きな数珠を選ぶのもよいでしょう。出自にこだわらずとも、自分の数珠をきちんと持つことが大切なことのように思います。
日本の中の仏教はかなり形骸化され、「葬式仏教」とも言われています。また、長い歴史を経る中で、数珠にまつわる話も多少変化してきていることが分かりました。とはいえ、数珠を持って仏やご先祖様に手を合わせる事は私たちの生活代々されてきたこと。やはり自分の数珠と共に合掌することは、旅立たれる方への礼儀であり、心のこもったお悔やみになるのではないでしょうか。