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日本における過激なお祭り騒ぎはハロウィンに始まったことではない

オレンジのかぼちゃ、コウモリやゴーストのイラストで表現される「ハロウィン」が、いつの間にか日本の秋の風物詩のひとつになって久しい。殊に数年前からは、東京・JR渋谷駅のハチ公口からスクランブル交差点、センター街、渋谷109までの道のりを埋める、大勢の「ホラー」なコスプレの人々に加え、路上に散らばるゴミの山、人混みの中でのケンカや痴漢行為、窃盗などのトラブルが問題になっている状況だ。もはや「秋だね〜」と呑気に構えている場合ではないと言っても、過言ではない。

日本における過激なお祭り騒ぎはハロウィンに始まったことではない

ハロウィンの始まりと歴史

ハロウィンはもともと、現在の中部ヨーロッパやブリテン島に住んでいたケルト人が行なっていた古いお祭りが起源とされている。秋の収穫を祝い、悪霊を追い出すものだ。ケルトの暦では、10月31日が日本で言う「大晦日」に当たり、しかもこの日は、死者の魂が家に帰る。また、この夜だけは地上をうろつく悪霊たちを全て動物に移し換えて追い出すことができると信じられていた。313年のミラノ勅令以降、キリスト教がヨーロッパ全土に広がり、更に15世紀末から16世紀にかけて、アメリカ大陸北部にヨーロッパ各地からの人々が移住するようになっても、ハロウィンの「本質」は忘れ去られることはなく、キリスト教の祭り、11月1日の「万聖節(ばんせいせつ)」の「前夜祭」的な子どもの祭りとして定着し、今日に至っている。

我々がよく知るハロウィンとは、かぼちゃに目・鼻・口を設けた、「ジャック・オー・ランタン」と呼ばれる提灯を玄関や窓に飾りつける。それは我々のお盆の迎え火と同じように、「霊」の目印の役割を果たしているのだ。そして夜になると、子どもたちは怪物や魔女などの仮装をし、近所の家を訪ねては、「Trick or treat! (お菓子をくれないといたずらするぞ!)と言って、お菓子をもらうというものだ。

日本におけるハロウィンとは

日本では、アメリカのような「子どもの祭り」というよりも、必ずしも「魔女」「怪物」に限らず、個人個人でお気に入りのアニメキャラなどのコスプレをして、地域の「ハロウィンフェスティバル」に参加するか、冒頭に紹介した渋谷ハチ公口前などのターミナル駅に繰り出すことが恒例になっている。

渋谷のハロウィンパレードに対して、ネット上では、大きな不安や中止を呼びかけるコメントがあふれた。そして10月29日には、長谷部健渋谷区長は一連の騒動に対し、「大変憤りを感じております」「到底許せるものではありません」として、「周囲に迷惑をかけることなく、モラルやマナー、法令を守り、健全にお楽しみいただくよう、よろしくお願いいたします」と異例とも言える強い調子で若者たちに呼びかけていた。

日本における過激なお祭り騒ぎはハロウィンに始まったことではない

日本における「過激」なお祭り騒ぎは、ハロウィンに始まったことではない。そもそも古今東西の「お祭り」とは参加者、そして観客の発する熱気や気迫、歓声をエネルギー源とするものであるため、それが嵩じて事件事故、そして怪我人や死者が出てしまうほどの「過激」なものになりやすいのは否定できない。

だが、お祭りの始原当時は「過激」だったり、必ずしも周囲の人々が喜んで受け入れていたものではなかったものであっても、長い時を経て、それが「当たり前」「伝統」になってしまい、「落ち着いた」ものに変化してしまっているものもある。

東京都大田区にある日蓮宗の池上本門寺での「お会式」もその一つ

例えば、毎年10月11日から13日の3日間、東京・大田区の日蓮宗の大本山・池上本門寺(いけがみほんもんじ)で行われる「お会式(えしき)」がある。「お会式」においては、毎年30万人の参拝者が訪れ、特に12日の夕方6時から深夜に至るまで、およそ2キロに渡って繰り広げられる、万灯(まんどう)練り供養が有名だ。これは、数多くの講(こう。仏教の講話を聞くために集まった人々の共同体)ごとに工夫を凝らした纏(まとい)が先導役となり、花々を飾った灯籠形の箱、万灯を連ねて、鉦(かね)や扇太鼓やお囃子とともに、踊り歩きながら、池上徳持会館から本門寺まで練り歩くものだ。とはいえお会式は、単なる「パレード」ではなく、祖師(そし)日蓮への報恩・供養のために灯火を献じること。そして祖師のみならず、神仏の霊験に対する祈願・祈念のために行われるものだ。しかもそれは、各講社同士で強い信仰のあかしを競い合い、物見遊山の人々の心を惹きつけ、お会式を盛り上げている側面もある。元々は1282(弘安5)年10月13日、日蓮は荏原(えばら)郡池上村の武士・池上宗仲(むねなか。生没年不明)の館で亡くなった。後にその地に建てられたのが、本門寺だ。それゆえ、全国各地の日蓮宗の寺院の中でも、ひときわ盛大にお会式が行われるのだ。

池上本門寺の「お会式」の始まりと歴史

池上本門寺のお会式が盛んになったのは、江戸時代、8代将軍吉宗の頃(1716〜1745)だ。甲斐國巨摩郡(現・山梨県)の身延山(みのぶさん)久遠寺(くおんじ)のご開帳に出立するため、品川の日蓮宗・海徳寺(かいとくじ)に講中(こうじゅう。講と同じ)が集合した。その際、神田の講中が芝三田の煙草屋・三河屋の暖簾を借り、それを講の目印に使った。それ以来、お会式を含む日蓮宗の法会の際は、講ごとに、大きく派手で工夫を凝らした「旗幟(きし。旗やのぼりのこと)」、花車、万灯に揃いの着衣、手ぬぐい、花笠、草履などを身につけ、互いに競い合っていったという。しかし天保の改革(1830〜1843)において、贅沢が禁じられたことから、全盛期には中央に大きなお題目、そしてその両端に金色の昇り龍を描くなどの派手なのぼりは影を潜めることとなった。その後、お会式では、旗幟ではなく、行灯(あんどん)式の大万灯を用いるようになった。明治時代ぐらいまでそれが続いた。昭和初期になると、行灯式に限らず、現在のような多種多彩な形状の万灯が登場するようになった。1910(明治43)年当時におけるお会式の12日の夜は、池上電車(現・東急池上線)や東海道本線、京浜電気鉄道(現・京浜急行線)などで終夜運転、臨時汽車が運行されたばかりではなく、池上通り(現・品川区東品川〜大田区千鳥)の出発点近くに当たる南品川の青物横丁から、すでにお会式に向かう人々の列が続々と歩いていた。大森駅前では、更に人々がごった返していた。そして寺の石段を上っていくと、何万人もの人々で埋め尽くされていた。そうしたことから、池上本門寺のお会式は、単に日蓮宗の信徒にとっての重要な宗教儀式であるばかりではなく、「池上名物」の名をほしいままにしていたという。

当時の「お会式」にもきっと難色を示した人はいたはず

そうは言っても、たとえ昔であっても、夜通しの派手な「お祭り騒ぎ」に対し、現在のハロウィン騒ぎに対するような難色を示さなかった人がいなかったとは限らない。そもそも、日本における歴史的大宗教者のひとりである日蓮宗の開祖・日蓮(1222〜82)は、生前において、全ての人々に無条件に受け入れられていた人物ではなかったからだ。

難色を示した理由の一つに日蓮の存在があった

安房国長狭郡東条郷(現・千葉県鴨川市)で生まれた日蓮は、近在の天台寺院・清澄寺(せいちょうじ)で学問を修め、16歳で出家した。その後、法華信仰を世に広めようと決意し、当時広く流布していた浄土教を強く批判した。そして自らの「法華至上主義」を広める場として鎌倉に行く。更に京都、比叡山、滋賀県の天台寺門宗総本山の三井寺、高野山、聖徳太子ゆかりの四天王寺など、各地の寺において仏教の肝要を極めた。当時は地震・疫病・飢饉等の天災が頻発していたことから、日蓮はその原因として、世の人々が法華信仰をないがしろにしているとし、このままの状態が続けば、ますます内乱が頻発するばかりではなく、他国からの侵略が起こると強く主張した。このような末法の世においては、「妙法蓮華経」の題目を唱える他に道はないとして、日蓮は自ら日蓮宗を開き、鎌倉で辻説法を行なったり、前執権の北条時頼に自らの著作『立正安国論』を献じたりした。既成概念を覆す、ある意味「過激」な行動ゆえに、日蓮は浄土教徒に襲撃される憂き目にも遭っている。しかし鎌倉幕府や伝統的仏教諸宗に対する激烈な批判を止めることがなかったため、日蓮は1261(弘長元)年、伊東に流される。2年後に赦免された後も、日蓮の信仰態度が変わることはなかったため、日蓮やその信徒たちは、何度も多くの人々に襲撃されたり、他宗の僧侶たちに訴えられたりするなど、常に危険状態にあったのである。

日蓮の意外な一面

しかも日蓮の場合、「僧侶」「宗教者」の枠を超え、旧来の常識を覆し、新たな価値観を創造した「革命家」であったばかりではなく、結果的に1271(文永8)年の蒙古襲来を「的中」させたという「予言者」の側面もあるのだ。「旧来の常識」の中には、「今までそんなことはなかったのだから、これからもあり得るはずがない」という「未来」に対する捉え方も含まれている。「まさかそんなことがあるなどとは…」と驚き、日蓮に敬服する人ばかりではなく、災厄をもたらした「悪鬼」のように、その「予言」が抽象的なものではなく、具体的な「蒙古来襲」という前代未聞、日本の歴史の中で「ありえない」とされていたことだっただけに、強い恐怖をもって受け止めた人々も少なくなかっただろうと考えられる。そうなれば、たとえ没後とはいえ、日蓮という人間の痕跡が人々の間に鮮明だった頃のお会式は、明治時代以降に見るような、日蓮宗の信徒にとっての重要な儀式という意味合いばかりではなく、「池上名物」など、「いいもの」だと捉えられていたとは限らない。熱心な信徒と地域住民との「トラブル」が、多々生じていた可能性は大きい。

時間の経過とともにいい意味でも悪い意味でも変化していくだろう

それゆえ、今現在の我々の目には、渋谷のハロウィン騒ぎは「過激」「非常識」「危険」に見えてしまっているが、後50年、100年と時が経過し、「伝統」となってしまったら、さながら池上本門寺の「お会式」同様、「渋谷」のシンボル的なイベントとして、多くの人々が心待ちにするようになるかもしれない。

しかし、それと同時に、既成のもの、「イベント仕掛人」を含む「大人たち」そのものに反発やわざとらしさを敏感に感じ取ってしまう、「尖った」若者たちからは、「渋谷のハロウィン、うんざり…」「またいつもと同じ」「年寄りが喜んじゃって…」と、退屈なものの一例になってしまうかもしれない。

参考文献

■宮尾しげを(監修)『東京名所圖會 南郊一之部』1910/1969年 睦書房
■池上町史編纂会(編・刊)『大東京併合記念 池上町史』1932年
■高木豊「日蓮」下中弘(編)『日本史大辞典 5』1993年(504−505頁)平凡社
■長谷部八朗「お会式」佐々木宏幹・宮田登・山折哲雄(監修)池上良正・島薗進・徳丸亞木・古家信平・宮本袈裟雄・鷲見定信(編)『日本民俗宗教辞典』1998年(64−65頁)東京堂出版
■長谷部八朗「万灯供養・万灯講」佐々木宏幹・宮田登・山折哲雄(監修)池上良正・島薗進・徳丸亞木・古家信平・宮本袈裟雄・鷲見定信(編)『日本民俗宗教辞典』1998年(533頁)東京堂出版
■藤井正雄(編)『新装版 仏教儀礼辞典』2001年 東京堂出版
■矢島妙子「ハロウィン」小島美子・鈴木正崇・三隅治雄・宮家準・宮田登・和崎春日(監修)『祭・芸能・行事大辞典 下』2009年(1462頁)朝倉書店
■板橋春夫「万灯」小島美子・鈴木正崇・三隅治雄・宮家準・宮田登・和崎春日(監修)『https://amzn.to/2D4ITZ2』2009年(1671−1672頁)朝倉書店

ライター

鳥飼かおる

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