宗教音楽と聞いて、皆さんは何を思い浮かべるだろうか。パイプオルガンや賛美歌など、キリスト教での宗教音楽は、結婚式などでも演奏、歌唱され、身近なものとなってきている。しかし、「仏教の音楽」、「イスラム教の音楽」などと言われると、途端にイメージがしにくくなる。今回は仏教音楽の中では特に木魚に注目しながら、世界の宗教音楽についてまとめた。
実は眠気覚ましだった!木魚今昔物語
お坊さんが読経するときに打ち鳴らす「木魚」。そもそも何故魚を模した形をしているのだろうか。これは木魚が、読経の際にリズムを整えるために打ち鳴らすほか、眠気覚ましの意味を持っていたことに由来する。かつて、眠る時も目を閉じない魚は眠らないものと信じられていた。そのことから、眠気覚ましの道具でもあった木魚が魚の形を模し、「木魚」と呼ばれるようになったと言われている。
現代の木魚の多くは中国産で、日本では愛知県でしか作られていない。その中でも、寺で使われるものは同県愛西市でのみ作られている。
木魚は楽器のジャンルでいうと、木製のスリットドラムと呼ばれるもので、現在は読経の際使われる他、管弦楽曲やJ-POPなどにも取り入れられている。
三大宗教もそれぞれ?世界仏教音楽の旅
では、仏教の音楽というとどんなものがあるのだろうか。仏教音楽で有名なものに御詠歌がある。御詠歌とは、仏の功徳や仏法を和語でたたえ、七五調で歌う和讃の一つである。西国三十三ヵ所の霊場に関する歌で、鈴や鉦に合わせて歌われる。
一方キリスト教では、先に挙げたようなパイプオルガンや賛美歌が有名であるが、パイプオルガンがキリスト教音楽として広がったのは九世紀頃の話で、初期のキリスト教で賛美歌は基本的にアカペラで歌われていた。初期のキリスト教では偶像崇拝(神を目に見える形にして敬うこと)が禁じられており、楽器という物体も偶像と見なされたことによる。
最後にイスラム教だが、イスラム教では予言者ムハンマドが音楽に対して耳を塞いだり、楽器を悪魔の呼びかけであると語った場面が、ムハンマドの言行録である「ハディース」に書かれている。これにのっとり、楽器の演奏は避けられる傾向にある。しかし、音楽がないわけではなく、「ナシード」と呼ばれる無伴奏で歌われる声楽曲がある。
読経の声に耳を傾けて
このように、宗教音楽はキリスト教に限らず、様々な宗教で行われている。読経や木魚もその一種であると考えながら聞くと、そのありがたさがさらに増すような気持ちになる。これを機に、法要などでももっと集中して、読経に耳を傾けたいものだ。