日本では火葬が一般的です。火葬が庶民の間で一般的になったのは、江戸期であると言われています。また当時は寺院が、葬式から埋葬までをすべて請け負っていました。そんな火葬ですが、今大変予約が取りにくい状況となっています。比較的安価な火葬場はほとんど予約が埋まっており、中には十日待ちの火葬場もあります。このような状況ですから、「亡くなってから火葬場を予約していては間に合わない」という声すらもあります。
これほどまで火葬場が混んでいる原因は様々でしょうが、今回は「火夫・火葬技師」と「直葬」の二つに着目して、原因を探っていきたいと思います。
火葬場と火夫・火葬技師の関係性
「火夫・火葬技師」とは、蒸気機関車のボイラーで、火力を調節する職業のことも指しますが、火葬場においては、火葬時に炉内を観察し、遺体が完全に焼けるように随時調節を行う職業のことを指します。
火夫は、高温の炉室で、強い冷風を浴びながら作業しています。冷風なしで作業を進めると、あまりの高温に命を落としてしまいます。具体的な作業は、遺体の全身が最後まで焼けるように炉内のノズル(ここから火炎が放射されています)を調節する、というものです。つまり、現代においても火葬は、一切の自動化なくして行われています。なぜなら御遺体のサイズは千差万別だからです。この事が、火葬場の回転率をあげられない理由で、つまり予約困難な状況を作っています。
儀式なしの直葬の増加
次に、通夜・告別式などの儀式を行わない直葬についてです。直葬では宗教儀式を行わないので、亡くなった遺体は直接火葬場へと運ばれます。直葬の大きなメリットとして、経済的負担が小さいことが挙げられます。これに死生観の変化も相まってか、直葬の形態をとるケースが最近増えてきています。日本人に、本当の意味で仏教を信仰している人は少ないでしょう。この事は、仏教が「葬式仏教」つまり形だけのものとして揶揄されていることからもうかがえます。仏教的儀式の価値が私たちのなかで希薄化してゆくのもおかしなことではありません。直葬の広まりは、火葬需要の増加を意味します。この状況を受けて、火葬炉を増設した火葬場もあるようです。以上述べたように直葬の増加もまた、火葬場混雑の要因のひとつとして考えられます。
火葬場不足問題の対応策
以上の他にも、火葬場が予約困難である原因は様々にあるでしょう。それらを吟味して今後火葬場はどうなるかを考えて行くことができるはずです。例えば、今回一つ目の要因として挙げた火葬が自動化出来ないという問題は、今後大きく改善される可能性があります。こうした要因をもとに、スムーズに故人を送るために、今後私たちが何をすべきかを考えて行くべきではないでしょうか。