2017年1月4日、VR情報発信サイトのワンダフルモーションが、自分の死後を体験できるVR動画を配信した。広島県の葬儀屋と提携して作成されたこのVR葬儀動画は、自分が納棺され、家族や知り合いに見送られ、火葬されるまでの流れが360°で体験できるのである。このVRによる葬儀体験というのは世界初だ。様々なものがデジタル化、情報化されていく中、葬儀業界もまた現代の状況やニーズに合わせて進化している最中である。
一家に一つだった仏壇も、いまや一人一台持ち歩く時代に?
もはや誰もがスマートフォンを持ち歩く時代となった今、仏壇も持ち歩くことができるようになったようだ。名古屋のIT企業、株式会社はんぶんこがスマートフォン向けモバイルアプリ、「おまいり~お経でお参り」を配信している。
故人の写真を登録し、お経を流すことができ、仏壇に手を合わせる際に鳴らす鐘(「りん」と呼ばれる仏具)の音も収録されているので、スマートフォンさえあれば、いつでも仏壇に手を合わせることができるわけである。なんと流れるお経も、真言宗、曹洞宗、日蓮宗、浄土宗、浄土真宗本願寺派等、各宗派揃っている。
まったく新しい葬儀の進出
プラスチック工業を扱う株式会社ニッセイエコは、まったく新しい形の葬儀を展開している。例えば、冠婚葬祭の際の来賓を管理する芳名帳は手書きが一般的となっているが、電子芳名帳ならより簡単に来賓の把握、香典の確認が可能であり、葬儀後、紙媒体に印刷することもできる。
また、ロボット導師なるものがある。その名の通り、ロボットが読経をしてくれて、実際の住職に読んでもらうよりもだいぶお手頃価格となっている。従来の檀家制度に馴染みのない人や菩提寺のない人に向けた新しすぎるサービスである。他にも、インターネトを介したライブ中継葬儀、自分のアバターを作成し、葬儀をシミュレーションすることのできるアバター祭壇等のサービスを展開中である。
エンディング産業の今後
これらのサービスは2017年に行われたエンディング産業展に展示されたものでもある。このエンディング産業展では、仏壇業者、花屋、寺院、ブライダル、石材、IT、流通業界等が参入しており、新しいモデルの葬儀を認知させるだけではなく、客に宣伝をする場でもある。というのも、この先、高齢者は増える一方であり、さらに晩婚化、少子化も相まって、人口は一層減り続ける。
国立社会保障・人口問題研究所によると、2040年にはそのピークが到来し、年間死亡者数が約167万人と予測されているのである。エンディング産業展は、このすぐ先に到来する葬儀ラッシュに向け、各種幅広いモデルの葬儀を人々に掲示するということも目的にしているのだ。
テクノロジーによって人の死に対する考え方も変わる?
元来日本人は、人の死を穢れを呼び込むものとして畏れ、塩をまき、日常とは切り離されたものとして扱ってきたが、今となっては終活という言葉も浸透してきた。死に対する意識は変わり、より現代的に効率化、単純化される。とは言っても、昔からの風習や宗教的な段取りは、急には変われない。スマートフォンで墓参りなど罰当たりだと考える世代は多いだろう。しかし、もはや昔からのやり方を大切にする世代と実際に葬儀を主催するであろう世代は一致しない。
故人の思いを尊重するのはとても大事なことではあるものの、葬儀を執り行うのは残された人であり、彼らの都合も大いに尊重されるべきであろう。大切な人がいなくなったと同時に、金銭的な問題、葬儀に関する知識の不足、宗教的な都合で頭を悩ますのは辛いものである。