地球温暖化の問題がいよいよ深刻に迫っていることを日々実感する毎日。環境に少しでも配慮しようという動きは年々広がっています。その流れが、いよいよ葬儀のかたちにもあらわれてきたようです。
「エコ」と聞いて連想することは?
「エコ」というと連想するのは、資源の再利用です。ペットボトルなどのプラスチックゴミ、割り箸などに代表される木材の廃棄物。これらを減らす運動は世界ですでに実践されていますが、木材といえば「棺」のほとんども木材で作られています。この「棺」への木材の利用を控えよう、という動きが出てきているのです。現在の日本の埋葬方法は基本的に火葬ですから、木棺を利用するのは当然です。しかし、その木棺を火葬する際に排出される二酸化炭素の量が、問題になっています。
車は年間で1800kgの二酸化炭素を排出
火葬で排出される二酸化炭素の量は、一体当たり平均150〜200kgといわれています。自家用車が年間に排出する二酸化炭素の平均が1800kgといわれていますから、車が1ヶ月に排出する量を、一体の火葬で排出していることになります。そう考えると、環境に配慮した遺体の処理方法、埋葬方法を考える必要があるのです。海外では、すでに二酸化炭素を一切発生させない埋葬が実施されています。その一例として、スウェーデンでは「フリーズドライ埋葬法」が進んでいます。これは、遺体を液体窒素で冷却し、粉末状に砕いて、堆肥にする、というものです。粉末状になった遺体は、一体で20〜30kgほどになり、これを、デンプンを主な原料とする棺に入れて地中に埋めると、一年以内に完全に土にかえる、というものです。ちょっと衝撃的な方法ですが、近年増え続けている「樹木葬」などと併用してすでに実施されているといいます。一方アメリカでは、現在8つの州で「薬品」による遺体の処理を認めています。遺体を溶かす、というこちらもかなり衝撃的な方法ではありますが、どちらの方法も、二酸化炭素を“一切”発生させない方法として推奨されているのです。
棺をエコな素材に変えること
では、日本ではどうでしょうか。遺体を薬品で溶かすのも、粉末状にするのも、そうすぐには定着しそうにない方法です。そこで国内ですすめられているのが「エコ葬儀」です。ひとつは、棺の素材を「木材」ではなく「段ボール」に変えて火葬する方法があります。2006年にはじまったこの取り組みは、“一切”というわけにはいきませんが、二酸化炭素の排出量を抑えることができます。また、使用される段ボールには200kg以上の重さに耐えるほどの強度があり、仕上げも木棺にそっくりです。
世界規模で考えるエコ
もうひとつ「地産地消」という取り組みもあります。「地産地消」というと食材を連想しますが、ここでは「国内の木材を利用する」という意味合いがあります。現在使われている木棺のほとんどが、中国で伐採された木材を使って作られており、それに対して、国内の、その土地で伐採した地元の木を使って木棺を作ろうという取り組みです。国内の木を伐採するのは日本の森林環境に良くないと思いがちですが、この取り組みの着眼点は“世界の環境を改善する”ことです。 海外の安い木材に頼る日本企業に待ったをかけ、世界各地の乱暴な森林伐採を減らすことで、結果的に地球全体の環境を良くしよう、という取り組みです。
最期に…
死に際してまで環境に配慮しなければならない現実には戸惑いもありますが、無視できない状況の中で、地球にも、人間にも納得のいく、より良い葬儀のかたちを、これからも模索してゆく必要がありそうです。