日常生活を送るうえで、できることならば世話になりたくない借金。車や不動産等の高額商品を購入する場合、現金一括で購入できれば最高ではあるが、そうはいかないのは仕方のないことなのかもしれない。終活を進めていくにあたり、身辺の整理に伴って財産や借金等のリストを作成されている方も多いと考えるが、筆者の経験上理由は様々であろうが借金について明確な証拠を残している方が少ないように見受けられた。
最も多いのが、個人間の借金を記録していないケース
金融機関から借り入れた借金の場合は、金融機関が発行する(有料だが)残高証明書や利用明細等で確認のうえ借金自体を確定させることができる。問題となるのは、個人間で借金があり金銭消費貸借契約書等の証拠となる書面を残していない場合だ。今回は、相続税の債務控除(相続税法第13条他)について触れてみたい。
プラスの財産からマイナスの財産を引いて、相続税は計算される
財産を有する者が亡くなり、亡くなった時点で所有していたプラスの財産から借金等のマイナスの財産(債務)を差し引いて相続税を計算する。当該制度を債務控除と言う。相続税法の規定では、債務とは亡くなった人が亡くなった時点であった借金で確実と認められるものとなっている。規定にある借金の具体例は、金融機関やローン会社からの借入金、未払いの公共料金や医療費等となっている。更に、債務には該当しないが葬式費用も債務控除の対象として相続税の計算時に差し引くことができる。
債務控除を受けるには、債務の証拠書類が必要!
ここで落とし穴となり得るのは、規定上の確実と認められるものという文言だ。実務上確実性がなく金額を確定していない債務でも、ある程度合理的に算定できれば証拠書類がなくても債務控除を適用して、差し引くことが可能である。しかし、税務署や家庭裁判所に対し、証拠書類がなく確実性を立証できないとなれば実際には差し引くことは不可能だ。つまりは、証拠書類により確実に存在を証明できない債務は、相続税の計算上差し引くことは可能ではあるが税務署に認めて貰えることは、事実上不可能となる。故に債務控除の適用を受けたければ、債務の証拠書類は必ず残しておかなくてはならない。
借金の記録を残しておくことは非常に重要
他の詳細な規定は省略するが、確実な証明ができなければ一切認めて貰えないと考えればいい。証拠書類がない債務においては残念だが諦めるほかはない。故人が多重債務者であるとか、浪費癖がある場合には要注意だ。故意に証拠を残さないこともあるからだ。こうなってしまっては、対応することは困難となってしまう。
いずれにしても、債務の整理や証拠書類の管理については、専門の弁護士やファイナンシャルプランナーに相談し、相続税については税理士に相談しつつ安全な終活を目指して欲しいと願うばかりだ。