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人が「大人」になるということと、そこに「死」がどう影響するかという問題

成人した後、我々は「幼稚」だと誰かに見なされてしまった時に、「いつまでも子どもじゃあるまいし…」と言われる。かと思えば逆に、「世間ズレ」しているような振る舞いや言葉を発してしまったら、「子ども時代の純粋な気持ちを忘れるべきじゃない!」と責められる。人は気づいたら「大人」になってしまってはいるが、「子どものまま」でいるべきだったり、逆に「大人」らしい人間でなければならなかったりするなど、ある意味自分の立ち位置が不安定な存在である。

人が「大人」になるということと、そこに「死」がどう影響するかという問題

「大人になる」とは、どういうことか?

そもそも、人が「大人」になるとはどういうことなのか。体が勝手に大きく育っていくことばかりではない。幼稚園〜小学校〜中学校〜高校…と、勉強したりスポーツをしたりする中で、人はいつしか「大人」になっていくが、そうした時の流れの中で出会った多くの人とのかかわり、本や映画、テレビ、今日ならばインターネット世界に触れることでも、人は「大人」になっていく。

「死」に対する概念の変化が人を大人にする?

精神科医の春日武彦(1951〜)は、人が「大人」になるに際して、「死」の概念の変化について、自身の経験を語っていた。

春日が初めて「死」に衝撃を受けたのは、5歳の時の親戚の葬儀だった。顔に白い布をかぶせられている光景を目にしたが、全く状況を把握できなかった。火葬場に行き、遺体が焼かれつつあることを誰かに教えられても「ぴんと」こなかった。ところが炉の扉の脇に蝋燭の形をした飾り灯が取り付けてあり、焔を模したパイロットランプが薄ぼんやりと灯っているのに気がついた。どうして灯っているのだろうと考えているうちに、いきなり、今、遺体が焼かれているサインなのだと思い至った。怖いとか残酷とか無残というよりも、何だかものすごく「いかがわしい」ことが行われているにも関わらず、大人たちは平然としている。その落差が幼い春日を脅かした。春日はショックで、その場にへたり込んでしまった。

次に春日が小学3年生になった時、飼っていた亀が死んでしまったのだ。春日は水槽の水を替えようと古い水を捨てたはいいが、水を入れるのを忘れ、そのまま水のない水槽に亀を一昼夜置き去りにしてしまった。翌日慌てて水槽ごと蛇口に持って行って水を注ぎ込んだが、亀は元気になるどころか、甲羅を背負った体は沈んだままだ。水位が上がるにつれて、びっくりするほど長く伸びた首だけが浮力で垂直に近いところまで持ち上がったが、生き返る様子は全く見られない。指でつついても、生命が失われてしまった禍々しい手応えばかりが伝わってくるだけだ。春日は罪悪感で吐きそうになってしまった。

そして3度目は小学5年生の時、春日は父親と映画を観に行った。そこでイタリアのグァルティエロ・ヤコペッティ監督の『世界残酷物語』の予告編を目にした。「世界」の「残酷」なエピソードとして、原爆実験の放射能の影響で、方向感覚が狂い、海へ戻るべきところを逆方向に歩み、無残にも砂漠へ迷い込んで死んでしまった「ウミガメの骨」が映し出されていた。うつろな眼窩をぽっかりと空けたウミガメの姿がスクリーンから春日に向かって、強烈に迫ってきたという。

誰もが経験する「死」との遭遇

こうした子ども時代の「死」との遭遇経験は、春日に限ったことではないだろう。人それぞれ、「大人」になる頃までに、身近にいる誰かの死、自分とは直接のない世界の死に多く触れる中、自らの死の概念を形成していく。現代の日本はイスラム圏の国々のように、日常生活が宗教的な戒律によって厳しく律せられている社会ではないが、「死」、そして葬儀そのもの、そして毎年、亡くなった日に行われる慰霊や祈念の儀礼に際し、「大人」は、たとえそれがその本人にとって「悲しい死」ではなかったとしても、厳粛に受け止め、それにふさわしい「悲しそうな」振る舞いをすることが「当たり前」とされている。それから逸脱して笑ったり、ふざけたりしようものなら、「子どもじゃあるまいし…」と呆れられるか、場合によっては「非常識!」「不謹慎!」などと、「大人」らしい「大人」の怒りを買って、大げんかになってしまうこともある。

自らの存在価値を認めるために必要なことは「成長しているという実感」

心理学者の柏木惠子は、人が自分の存在に意味を認め、生きがいを感じる基盤は、自分が成長しているという実感である。それゆえ「発達」とは人が生きている証しだ。例えば我々は「○○さんから『影響を受けた』」、「○○に『育てられた』」、「〇〇から『学んだ』」などと、様々な人との交流や自身の体験によって、それまでの自分にはなかった力や知識を得る。こうした変化こそ「発達」だ。それゆえ、「青年」以降、「中年」「老年」…死ぬまで我々は「発達」し続けると言う。

子供が大人になる過程で経験する親の死

とはいえ柏木は、現代の超高齢化社会という現実をふまえ、「大人」になった「子ども」が必ず出会わなければならない親の老衰病死に関して、大きな変化、深刻な問題が起こっていると指摘する。かつては親の早世は稀ではなく、子どもの最大の悲しみであり不幸だった。親の長生きは子どもが切に望むこと、「長寿」という語にふさわしいものだった。しかし今は必ずしもそうではない。医学の進歩は急速な長命化をもたらし、親の死は嘆かれ惜しまれるとは限らず、時に「待たれる」ものとさえなったと言う。柏木の指摘から更に進んで、昨今では珍しいものではなくなった、「介護殺人」「心中」など、認知症などに罹った親の介護に身も心も、経済状態も限界を覚えた子どもが、自ら親の「死」をつくり出しさえしているのだ。

春日の子ども時代の記憶の中の「死」の概念、そして世間一般の、「死」が悲しみであり不幸であること。厳粛でありつつも、怖く、避けたいもの…といった「死」に対する「常識」は、今、そして5年後、10年後も変わらないはずである。しかし「変わらないはず」とは断言できない。旧来の伝統や慣行がそのまま継承されていくかどうか不透明な状況を、今の我々は生きている。

必ず訪れる「死」。その「死」をどう捉えるかが重要。

ただ言えることは、人は「死」からは逃れることはできない。それを残された人々はどう埋め止めるのか。また、自分自身はどう死ぬか。「大人」の「みんな」と同じ、「昔のまま」でいいのか。その時々に即したありように柔軟に身を任せるべきなのか。いつか来る「その時」に、あくまでも、周りの「大人」の誰かの顔色を伺うのではなく、あくまでも「大人」の「自分」で考えて欲しい。

一般に「青年」までに頂点に達したとされる体力・知力などが、ある程度の年齢を境に、「消失/衰退」という形で、「若い頃」よりも下降し始めるのは事実だ。とはいえ、子どもの頃には楽にできた、理屈抜きの丸暗記が難しくなったにしても、大人になれば、それまでの経験と照らし合わせたり、誰かの助言を参考にしたりしながら、覚えるべきこと、覚えなくてもいいことを取捨選択する。また、覚えづらい時は、メモを取る、図や記号に置き換えるなど、自分なりに忘れないようにする工夫ができるようになる。これが「子ども」とは異なる、「大人」の「発達」の一例だと、先に挙げた柏木は述べている。

それゆえ、避けられない「死」、そして自分がつくり上げた死の固定観念からの「自立」こそ、まさに、「発達」し、円熟した「大人」そのもののありようなのだ。

参考文献

■春日武彦『いかがわしさ」の精神療法』2012年 日本評論社
■柏木惠子『おとなが育つ条件 −発達心理学から考える』2013年 岩波書店

ライター

鳥飼かおる

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