何年も遠隔地に住む親と会っていない。海外に住む兄弟と暫く会っていない。そういった人達は、一定数存在するものと思われる。そのまま放置していた場合、状況によっては非常に深刻な問題に発展する可能性がある。問題とは何か、そう遺産相続に関する問題だ。放置した状況だと、家族の様子が把握できないばかりか、意思疎通も困難となってしまい、相続が開始された時に取り返しのつかない状況になることもある。
遺産隠しが発覚した場合、最悪懲役刑も有り得る
遺産相続に関する問題で、最も多く、かつ、深刻な状況になるものは、遺産分割協議である。しかし、その前段階で相続人の一部が起こした行動により、より大きな問題へと発展してしまうのだ。その行動とは、遺産隠しだ。一部の相続人が、被相続人の遺産を自分達のものとして隠匿することである。
本来ならば、被相続人が所有する遺産は、法定相続分乃至は相続人達で協議し、合意した持ち分により被相続人の死後に分配されるべきものである。だが、一部の相続人による遺産隠しによって、遺産分割協議が揉めるだけではなく、裁判まで発展してしまうことになる。更に深刻な状況になるのは、税務署が遺産隠しを相続税の虚偽申告、即ち脱税と見做すことなのだ。そうなっては、最悪の場合だと懲役刑も覚悟しなければならなくなる。
遺産隠しが発覚した場合の対処方法
遺産隠しが発覚した場合の対処法だが、個人の力で対処することは、まず不可能と思って良い。理由は、裁判において遺産隠しの事実を証明することが非常に困難だからだ。遺産隠しの標的となり易い資産は、現金預金や純金地金だ。どちらも隠匿が容易であり、また、他の資産を購入すれば事足りる。因みに不動産や有価証券は、売買には必ず第三者(不動産会社や証券会社等の業者)が介入しているため、隠匿は事実上不可能だ。個人の力では無理と言って諦める必要はない。遺産分割調停を家庭裁判所に申し立てると、裁判官が職権にて確実な調査をして貰える。費用も2000円程度で済む。
遺産隠しが最低と言われる所以は、脱税とみなされた場合の連帯責任となるペナルティ
最悪の状況というのは、前述のとおり税務署に脱税と見做される場合だ。遺産隠しをした相続人以外の相続人が、隠匿の事実に気付かなくても税務署の調査官が隠匿の事実を発見することが非常に多い。そうなれば、内容は兎も角として、隠匿したうえで相続税を過少申告(虚偽申告)したことには間違いないので、脱税と判断されてしまう可能性が高く、言い逃れはできない。当然連帯責任となるので、注意が必要となる。
何れにせよ、弁護士等の専門家に相談することも重要な解決策ではあるが、そうなる前に家族間の意思疎通をし、疎遠にならないようにする方が、最も効果的な対処法であると同時に、有益な終活にも繋がると思われるが、如何だろうか。