宇佐八幡宮、清水八幡宮とともに日本三大八幡宮の一つに数えられる 福岡県の筥崎宮(はこざきぐう。箱崎八幡宮ともいわれる)では、今年も『放生会(ほうじょうや)』の季節がやってきた。
この祭りは 春に行われる『博多どんたく』、夏に行われる『博多祇園山笠』と並んで 博多三大祭りに挙げられ、福岡県民にとってなじみ深い神事の一つだ。その起こりや歴史について今回は紹介したいと思う。
筥崎宮で行われる『放生会(ほうじょうや)』って?
そもそも『放生会』は『ほうじょうえ』と呼び、魚や鳥、獣などの殺生を戒め、それらを野に放そうとする宗教儀式だ。仏教の戒律である『殺生戒』が起源である。日本では、明治維新以前までの神仏習合によって、この考え方が神道にも取り入れられるようになった。作物の収穫や食料の恵みに感謝する意味も込めて、全国の寺院、あるいは八幡宮で祭りが催されている。
筥崎宮で行われている『放生会』だけは『ほうじょうや』という呼び方をする。「合戦の間多く殺生す よろしく放生会を修すべし」(筥崎宮公式サイトより引用)というご神託によって、その歴史は1000年以上にもわたる。
期間は9月12日から18日で、この七日間 筥崎宮の参道には様々なで店が並び、九州でも屈指の秋祭りとなるのだ。また、2年に一度、福岡市無形民俗文化財に指定された御神幸が行われる。これは今年2017年も開催される。
亡くなった生命に感謝する『放生会供養祈願祭』
筥崎宮の放生会では、あらゆる生き物の霊を慰め、感謝するという気持ちを込めて『放生会供養祈願祭』が催される。
自分たちが今生きているのは、他のたくさんの生命の犠牲のおかげであって、自分たちは生かされている、という考え方がもとになっている。そんな多くの生命の霊に感謝し、同時に今後のさらなる商売繁盛、また家内の安全などを祈る。
筥崎宮では、この祈願祭の開催時期に やむを得ずに殺生してしまった生き物、また家族の一員として暮らしたペットの霊祭りを受けつけているそうだ。
亡くなった命、今ある命、ともに感謝する
期間中は100万人もの人々が訪れ、大いににぎわいを見せる筥崎宮の放生会。何度か訪れているが やはりすごい人手で、「ナシもカキも放生会」という言葉が残っているように 県民には昔から親しまれていることがわかる。
その背景には仏教の思想、神仏習合という日本の歴史など、様々なことが関わっている。何よりお祭りが行われる由縁は、今までに亡くなった数えきれないほどの生命を慰め、そして自分たちを生かしている今ある多くの生命、ともに大切にすることにあるのである。
楽しいお祭りをきっかけに、日頃意識しない命たちへの感謝してみてはどうだろうか。