急速な少子化によって、日本の伝統工芸や伝統芸能の跡継ぎがいない、という話はよく聞く。廃業にしてしまったり、自治体などを通じて跡継ぎを募集したりしている場合もある。これは、「寺」という家業においても言えることではないだろうか。伝統工芸や芸能の場合であれば、とにかくそこで働き始めたり、「弟子入り」したりすることによってその道が開けるイメージだが、僧侶の場合はどうなるのか。そこで、寺に生まれ育たなかった人が僧侶になるためにはどのようにしたらよいのかについて触れてみる。
僧侶になるためには「得度」を受けなければならない
宗派によってそれぞれの違いはあるものの、僧侶になるには「得度」と呼ばれる仏門に入るための儀式を受けなければならない。髪の毛を剃る「剃髪」が行われ、仏弟子としての名前が与えられる。私たちがよく耳にする「出家」がこの「得度」にあたる。僧侶となる決意を問われ、これからの修行に対する心の持ち方を教わるのである。
「得度」の前に信仰を深める必要がある
この「得度」を受ける前には、自身で仏門とは何かをしっかり学び、信仰を深める必要がある。その方法として一般的なのが仏教系の大学や、総合大学の中の仏教を専門で学べる学部への進学である。宗派によって大学も分かれるが、例えば、曹洞宗であれば駒沢大学、浄土真宗であれば龍谷大学、日蓮宗であれば立正大学、真言宗であれば高野山大学などが有名である。その他、意外であるが、専門学校や通信教育でも学べる仕組みがある。
「得度」のあとは「修行」が必要
しかし、いくら大学で仏教を一生懸命学び信仰を深め、「得度」を受けたからといって僧侶になれるわけではなく、どんな場合でも必ず必要となるのが、「修行」である。卒業した学校などによって違いはあるが、おおよそ2年間その宗派の寺院の中で生活をする。自由な外出ができず、朝4時や5時に起床、食事はいわゆる「精進料理」、寺院によって様々な修行があるようだが、私たちがぼんやりイメージしている通りの「大変さ」らしい。
「修行」が終われば晴れて僧侶に。求人の多くは大学に集まる。
そんな、甘くない修行期間が終わると晴れて僧侶になれる。寺院で働く権利を得られるわけである。寺の子供に生まれた場合はそこで僧侶として働けるが、一般の人の場合はどのようにして「就職」したらよいのか。
僧侶の求人の多くは大学に集まる。一般企業に対して学生が就職活動するように同じく寺院に対しても自分をアピールし、選んでもらうというわけだ。ただ、寺院を選ばなければ少子化のこのご時世、「就職先がない」という状況には陥らないようだ。
後継者不足が騒がれている仏教界
実は筆者の実家は寺である。父が僧侶だが、私自身は私と妹の2人姉妹。幼心に、「将来は私が婿をもらって寺を継がなければならないのか。将来の選択肢が狭まっているな。」と悩んでいた思い出がある。結局、親戚の家も寺であり、その家が男3人兄弟であったためその一人が私の実家の寺を継ぐことになった。
寺院でも、他の業界と全く同じように跡継ぎ不足が深刻化している中、もっと「僧侶」という職業が、一般の人でもなれるものであることが認識されることと、就職の選択肢の一つとして当たり前の時代が来ないものかと考えている。