ペット大国日本において、ペットが亡くなった後に葬儀を行うことはかなり一般的になってきた。ペットのための霊園も、ごく当たり前に町中に見ることもできる。
動物の死を悼み、その冥福を祈る。その思想は何も新しいものではない。動物の葬儀は各国の、さらに歴史の様々な場面に見て取ることができる。
そして最も古いと言っても差し支えないであろう例、それは3000年から4000年ほど前の古代エジプトにある。なんと古代エジプト人たちは、動物のミイラをも作っていたらしいのだ。
古代エジプト人の作る「ミイラ」とは
そもそもミイラとは、乾燥させ、長期間にわたって原型を留めておくことができるようにした人間の死体だ。古代エジプト人たちは、その死生観や死者の復活信仰などにより、死体を永遠に保存することを願ってミイラづくりが盛んに行われた。
ミイラが作られたきっかけとなったのは、エジプト人たちの「死者への敬意」や「復活の願い」。特に王のものは丁寧に防腐処置が施され、高級な麻布でくるみ、豪華な棺の中へ入れた。だからミイラは人間専用の葬り方だと考える人も多いだろう。しかし以前より、動物、特に飼われていた動物たちのミイラが次々と見つかっている。
古代エジプト人もペットを亡くして悲しんだ?
古代エジプトで作られたと言われる動物のミイラは、数も多く 動物も様々だ。犬、ヒツジ、ヤギ、牛、果てはヒヒまである。中でもたくさん発見されているのは、猫のミイラだ。丁寧に麻布で巻かれ、木製の棺に入っていたり、顔の部分に模様が描かれていたり、金が塗られていたりと、手間をかけて作られていたことがわかる。
古代エジプトにおいて、多くの動物たちが神様として大切にされてきた。犬であればアヌビス神、トキであればトト神というように神々が定められており、家庭で飼うときも大切にされていた。前述した猫に当てはまるのは、バステトという女神である。バステト女神は愛と喜びに彩られた女性中心の世界を象徴しており、家庭でも身近な動物として、ペットとしてかわいがられていた。ペットの猫が亡くなったときには、飼い主は眉をそり落として悲しみ、ミイラを作って バステト女神の神殿に葬ったという。
「家族の一員」として葬ること
古代エジプト人たちが 飼っていたペットを手厚く葬っていたのは、動物たちを神様として信仰していたから、という理由だけではない。そこには間違いなく、ペットを「家族の一員」とみなしていたことが伺われる。
古代エジプト文明の残る遺跡には、日常を描いた壁画や文章が多く残っている。特に家庭的な話題において、猫は頻繁に登場する。
それも 女神としてではなく、主人の座る椅子の下でくつろいだり、魚をむさぼっていたり、といった身近な場面だ。
猫を飼っていた古代エジプト人たちにとって、家族を心を込めて葬るのは当然のことだったのかもしれない。
現代人もその心は同じだろう。ペットたちが天国に行った後も安らかであれるように、ペット専用の霊園が全国規模で数多く経営されている。家族の一員として、生きている間も、亡くなった後も、ペットたちを大切にしたいものだ。