不慮の事故や予期しない災害によって、突然に命を落としてしまう可能性は誰もが持っている。さて、もしあなたがそのような「突然の死」に遭ってしまったとして、あなたは自分のパソコンやスマートフォンのデータを、遺された家族や他人にそのまま見せることは出来るだろうか?
いつか自分が死んでしまったときのために身の回りの物を整理したり、エンディングノートを書いたりと 最近何かと話題になる『終活』。特にデジタルデバイスが普及した現代、『デジタル終活』なるものがあることをご存じだろうか。
『デジタル終活』ってなんだ?
前述したように『終活』とは、いずれ訪れる自分の死の瞬間のために、葬儀やお墓のことを決めたり、遺産相続について書き残したり親族に伝えたりするといった、人生の終焉に供えた事前準備のことだ。それに『デジタル』という言葉がくっついている。つまりは、パソコンや携帯、スマートフォンなどのデジタルデータを生前に整理しておこう、といった『終活』のひとつなのである。
ここで『データ』が指すのは、主なところでは画像や文書、連絡先などだが、パソコンやスマートフォンに保存されたもの全てが対象だ。
故人の遺したデータが遺族に思わぬ災いをもたらす?
そもそもなぜデジタルデータを生前に整理しておく必要があるのだろうか。『デジタル終活』が流行する背景には、特に終活についてまだ行動を起こしていない若い人々の中で、死後に『デジタル遺品』が様々なトラブルを起こすケースが増えていることがある。
例えば妻が、不慮の事故によって亡くなった夫のパソコンから、浮気の証拠となる大量の知らない女性の写真を見つけてしまった・・・といったトラブル。そう、親族の突然の死にあたって身近な人が個人の遺品を整理するときには、時として「知らなければよかったもの」を見つけてしまうことがあるのだ。
人には誰しも、大なり小なり秘密や知られたくないことを抱えているものだが、突然死にあたっての親族の遺品整理は、こういったものを見つけられ晒されてしまうかもしれない、という不安があるとも言える。特にデジタルデバイス上のデータは、自分しか見ないから大丈夫、といった安心があるかもしれない。そうしてそれを見つけてしまった遺族もまた、失望あるいはやりきれなさを覚えてしまうかもしれない。もちろん、見られたくないものが自分の死後勝手に見られるかもしれないと思うと、自分の尊厳にもかかわる。そんなわけで、『デジタル終活』は終活のひとつとして、特に30~50代の若い世代に意識されるようになったのだ。
おわりに
自分が生きていればトラブルが起きても対処することは可能であるが、死んでしまっては何の打つ手もない。そういった意味では、自分の尊厳を守るためにも、あるいは家族や親しい人に余計な負担を与えないためにも、『デジタル終活』は検討した方が良いかもしれない。
2017年現在、パソコンの普及率は約67%、スマートフォンの所持率は約77%までに上った。通信機能の広がりやインターネットの普及とともに、自分の死後の準備の在り方も大きく変わっている。
便利さと引き換えにそれ特有の余計な不安がついてきたことはなんとも皮肉であるが、できれば日頃から、データの整理にも気にかけてみてはいかがだろうか。「もしも」は誰にでも起こりうるのだから。