多くの犠牲者を出した東日本大震災。実に痛ましい災害であり、被災者の心にも大きな傷を残した。その傷を癒すべく、「手乗り地蔵」なるものが登場している。被災者の心の傷を癒す助けになれば、と彫刻家である平泉正司さんが作成したものである。
手のひらに乗るサイズの小さな地蔵の石像であるこの手乗り地蔵は、被災者の精神的な支えになっている。柔らかな笑顔をたたえた地蔵は、残された遺族たちの心を癒す存在として活躍しているのだ。
精神的なケアとなっている手乗り地蔵
遺族や被災者の精神面でのケアはしばしば取りざたされる。そんな中で重要になってくるのは、精神的な支えとなるものの存在である。一人で抱え込んでしまうような辛いことも、他と分け合えば心の負担が減る。そんな支えになるものが、この手乗り地蔵だということだ。
手乗り地蔵は被災者に対する癒し手として大いに活躍している。楽しいことを話せば笑顔に、辛いことを話せば悲しい顔をする。手のひら地蔵は心を持っているかのように、被災者のそばに寄り添ってくれている。
手乗り地蔵はボランティアの一環
素晴らしいのは、この手乗り地蔵は被災者に対して無料で配布されているということだ。つまりボランティアの一環としてこの手乗り地蔵は作られているのだ。作者の平泉正司さんは「東日本大震災で被災されて、ご家族を亡くされた方に、少しでもぬくもりをお届けできれば」と考えているようだ。
そんな心が伝わったのか、実際に手乗り地蔵を心の支えとしている方は、自分の息子のようにこの手乗り地蔵をかわいがっている。東日本大震災の津波の被害によって息子を亡くした方は、手乗り地蔵に息子の名前から「秀坊」と名付けて手乗り地蔵を心の拠り所としているのだ。
ボランティアでの手乗り地蔵の提供を受けたとある人は、手乗り地蔵を受け取ってから5年間、ずっと手乗り地蔵を心の拠り所としてきた。自分の心を映しているかのような手乗り地蔵に、長く心を癒してもらっている。
最後に…
この手乗り地蔵をボランティアで作成している平泉正司さんは、2012年の1月から手乗り地蔵を作り始めた。それまでの平泉正司さんは被災者の方々に対して、「何もできないうしろめたさがあった」と話している。被災者の方々へ何もできない歯がゆさが感じ取られる。
世の中には、このような素晴らしい活動をボランティアでしている方がいる。手乗り地蔵を作っている平泉正司さん以外にも、たくさんのボランティアの方々が被災者の皆さまに関わっているのだ。今一度、自分にできることを見直し、それを実際の活動に活かしていくことが必要とされるのではないだろうか。