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奇跡や希望、復興、力強さ、粘り強さなどを象徴する陸前高田市の一本松

2011(平成23)年3月11日に起こった東日本大震災での地震や津波によって、陸前高田市気仙町の7万本にも及ぶ高田松原(たかたまつばら)の松は海に流されてしまった。しかしただ1本だけ、残った。その「奇跡の一本松」に多くの人々が驚嘆し、その力強さに勇気づけられたはずである。

奇跡や希望、復興、力強さ、粘り強さなどを象徴する陸前高田市の一本松

松には古くから神秘や奇跡の願いを込める習慣があった

しかしその後、2012年(平成24)5月に、夏の酷暑や地盤沈下による海水の影響を受けたことなどから、その松が壊死していたということが明らかになった。陸前高田市はその松を捨て去ることなく、復興のシンボルとして「復元」することを決めた。「奇跡の一本松プロジェクト」が組まれ、後世に受け継いで行くため、世界中から集められた「奇跡の一本松保存募金」から1億円以上をかけて、モニュメントとして保存整備することとなった。

その決断の是非はともかく、日本人は古くから、「松」に神秘や奇跡の願いを込める習慣があったようである。

松という名前の由来は?

松は言うまでもなく、常緑樹だ。日本の松では、クロマツとアカマツが身近に見られる。クロマツは東北地方〜九州にかけての海岸線に自生している。また、庭木や盆栽としても栽培されている。樹皮が黒褐色で「男性的」に見えるため、雄松(オマツ)とも呼ばれている。一方のアカマツは北海道南部〜九州までの内陸部・山地に自生する。樹皮が赤褐色で「女性的」であるため、雌松(メマツ)の名もある。

松が「マツ」と呼ばれているのは、もともと神の来臨を「待つ」木であると捉えられていたことからきているという説がある。それは、常に緑の葉を保ち、雄々しく天高く生え、なおかつ大地にしっかり根を張っていることから、古代から日本においては、「神の依代(よりしろ)」の木と見なされていたことを根拠としている。依代とは、神と人間を結ぶ媒体のことだ。当時の祭祀の本来の意味/意義は、神霊を呼び迎えて、これに献供(けんく)して侍り、慰め、和ましめ、神人和合の実をあげることだと捉えられていた。その際、神霊は人間の目の前に直接姿を見せることはない。常に何らかの依代を通して、人間世界に来臨すると信じられていた。その依代には、植物・岩石・山岳などがあるが、植物では常緑樹や、季節の花々が選ばれてきた。時を経るにつれ、依代の木はいつしか松に統一されていった。その名残として現在でも、新年を迎える際、門口(かどぐち)に一対の門松を立てる習慣がある。門に松を立てるのは、穀霊(農耕神)でもあり祖霊(先祖神)でもある「年神(としがみ)」を迎え入れるための、古代以来信じられてきた「依代」、或いは「目印」の意味があるのだ。

万葉集にも残る松の歌

このような「松」に願いを込めた古い例に、『万葉集』巻2、141に残る、有間皇子(ありまのみこ、640〜658)の歌がある。
  
  岩代の浜松が枝(え)を引き結び 
  ま幸(さき)くあらば また帰り見む

有間皇子は孝徳天皇(596〜654、在位・645〜654)の唯一の皇子で、皇位継承の有力者だった。『日本書紀』巻26、斉明天皇の3年(657年)9月の条によると、有間皇子は政争に巻き込まれるのを避けるため、狂ったふりをして、牟婁湯(むろのゆ、現・和歌山県西牟婁郡白浜町の湯崎温泉)に療養に出かけるなど、聡い人物だったという。

翌4(658)年11月、斉明天皇(594〜661、在位・皇極天皇として642〜645、斉明天皇として655〜661)が牟婁湯に行幸中の折、有間皇子は留守居役であった蘇我赤兄臣(そがのあかえのおみ)から、斉明天皇の失政を聞かされた。それに皇子は、「この年になって、やっと挙兵する時がきた」と大喜びした。そして赤兄と謀反の企てをしていたときに、脇息(きょうそく)が突然折れてしまった。それを不吉な前触れと捉えた皇子は、謀反を中止することを決めた。しかしその夜、赤兄は皇子を裏切った。皇子の居宅を兵で包囲させ、それと同時に、行幸中の斉明天皇に急使を送り、皇子の企てを報告させた。

結び松のその後

捕らえられた皇子は、滞在中の斉明天皇の元へ護送される道中の岩代(いわしろ、現・和歌山県日高郡みなべ町西岩代)で、浜の松の枝を自ら結び、「もし無事であったら、この枝を再びここにやって来て、見よう」と自らの無事を祈る歌を詠んだのだ。

牟婁湯で斉明天皇の皇太子である中大兄皇子(後の天智天皇、626〜672)から尋問された有間皇子は、「天と赤兄とが知っているであろう。私は全く知らない」と答えた。その後有間皇子は、飛鳥京への帰り道である藤白坂(ふじしろざか、現・和歌山県海南市)で処刑されてしまった。皇子はまだほんの、19歳という若さだった。再び、結んだ松の枝を見ることは叶わなかったのだ。

『万葉集』には、有間皇子の死後43年を経た大宝元(701)年、文武天皇が紀州に行幸し、牟婁湯にも立ち寄った際に、柿本人麻呂か、他の詠み人であるのかは判明しないが、当時現存していたとされる有間皇子の「結び松」を見て、心打たれて詠まれたものが収められている。

  後(のち)見むと 君が結べる岩代の 
  小松が末(うれ)をまた見けむかも

時を越えて語り継がれる松の木

歌意は、後に見ようと思って結んでおいた岩代の小松の梢(こずえ)を、皇子はまた見たであろうか、というものである。『万葉集』には、この歌以外に3首、皇子を悼む歌が掲載されている。それはひとえに、『万葉集』の選者や歌人たちのみならず、当時の貴族たちの間で、中大兄皇子らによる権力争いに翻弄される形で非業の死を遂げた有間皇子に対する深いシンパシーの念が共有されていたからだろう。

時を経て、日本全国の名所旧跡を訪れ、多くの紀行文を著した文豪・田山花袋も大正末期に、「大津皇子の『百つたふ磐余の池に鳴く鴨を今日のみきゝて雲がくりなん』と言ふに引(ひき)くらべて、一層深い悲哀を感ぜずにはゐられないであらう。ましてそこには今(いま)だにその松が殘ってゐる。何代經たか知れないが猶ほ且つ殘つてゐる」と岩代の松を実際に目の前に見た感慨を述べていた。実際に岩代の松のそばに立った時、当時の万葉歌人や花袋と同じ思いを、おそらく我々も抱くはずだ。

最後に…

「生きている」松ではなく、復元されたモニュメントではあるが、陸前高田の「奇跡の一本松」はこれから、岩代の松のように、そこを訪れる人々に2011年3月11日の東日本大震災を思い出させ、勇気を与える役割を果たしていくものになるのだろうか。もともと「松」が有していた、神と人間をつなぐ依代、あるいは神に訪れてもらうための目印としての意味合いに加え、最後まで生き残った「粘り強さ」、そして震災からの「復興」という新たなイメージが付与された「奇跡の一本松」は、今後新たに物語や伝説を生み出していくことだけは、間違いないと言える。

参考文献

花袋行脚、 萬葉植物事典、 日本の神仏の辞典、 萬葉集全歌講義、 日本書紀 下 (日本の古典をよむ)、 日本人 祝いと祀りのしきたり、 幻想の花園:図説 美学特殊講義、 、 、 、 、 、 、 

ライター

鳥飼かおる

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