法人の役員や個人商店の経営者にとって、法人税・消費税・所得税の税務調査というものは非常に厄介で多大な精神的負担を強いるものとして嫌っている方が多い。
税務署から優良企業(個人経営含む)と見做されれば、5~7年に一度の割合で法人税・消費税・所得税の税務調査が実施される。しかし、過去に脱税等の不正行為を行い税務署から標的とされた企業だと、3~4年に一度程度の割合で税務調査が実施されることとなり、調査内容も広範囲並びに詳細に渡る。
税務調査は相続税についても実施される
一般的に税務調査とは、脱税等の不正行為を行った企業に実施されるものと解釈している方が多いと思われるが、決してそうではない。どの法人や個人商店にも税務調査が実施される。そして、相続税にも税務調査が実施されることがあるのだ。
内容は、税務署に申告(申告書に記載)された資産や税額が、本当に正しいかどうか税務署や国税局の担当官が相続人達の自宅を実際に訪問し、資産状況や申告内容を詳細に調査する。
統計によれば、相続税の税務調査が実施された場合には、約80%の割合で申告漏れが発覚し、相続税の修正申告を行い、追徴税が課税されている。
税務調査を受けないための正確な申告と、受けた場合を想定した対策が重要
結論を言えば、相続税の節税対策も重要だが、税務調査の対象にならない正確な申告と税務調査の対象になってしまった場合の対策の方が、節税対策より重要なのだ。
何故だろうか。税務署は、最初に提出された相続税の申告書を決して鵜呑みにはしないからなのだ。状況に応じ、銀行の内部調査まで行い徹底的に調べ上げる。相続人だけならば良いが、相続人の親族の銀行口座まで詳細に調べる。そして、何か目立つもの(後述)や申告ミス等が有った場合、税務調査が実施されることになる。因みに、税務署は調査権限を持っているため、裁判所の令状が無くても銀行の内部調査も簡単に実施できる。
税務署はいとも簡単に個人の銀行口座を調べることが出来る
では、税務調査の対象になり易い目立つものとは何か、それは、銀行口座だ。被相続人名義の銀行口座から多額の現金が引き出されていた、または入金があった。相続人とその親族の銀行口座に、被相続人名義で入金、または支払いがあった。
特に注意すべきは、被相続人の配偶者名義の銀行口座に不自然(税務署が判断する)な入出金があった場合だ。他にも被相続人の死亡した日の直前・直後に高価な動産(高級車や宝飾品等)を相続人やその親族名義で購入していた場合も同様だ。
上記のような事実が判明した場合、脱税を意図しておらず、正確な申告をしていても税務調査の対象になってしまう。税務署の調査員は執拗なまでに根掘り葉掘り聞いてくる。全ての手続きについて、確実な証拠を残すことと矛盾の無い説明をしないと絶対に納得してはくれないし、誤魔化しも一切通用しない。解決策は専門家に相談することだが、ある意味節税対策よりも重要であることを意識しつつ対策を練ってほしいと思う。