最近、首都圏に限らず空き家が増加している報道を目にされた方も多いのではないだろうか。それと連動している可能性が高いかもしれないが、賃貸アパートの空室率も増加傾向にあるという。
今回は、相続税の節税対策である賃貸アパートについて、空室に伴うリスクの側面から見てみたいと思う。
賃貸アパートの評価額は減額される
何故賃貸アパートが相続税の節税対策になり得るのか。それは、土地の上に賃貸用アパート並びに賃貸マンションを建築し、実際に賃貸した場合には、土地並びに賃貸アパート並びに賃貸マンションの相続税の評価額が減額される特例があるからだ。
仮にある土地があったとして、当該土地の評価額が1000万円だった場合、当該土地の上に賃貸アパートを建築した際の評価額は800万円となる。つまり20%程度減額されることとなる。不動産の評価額が大きければ、当然のように減額された際の節税効果も高くなってくる。
相続税対策で急増したアパート建設と、それに伴い比例して増えた空室率
平成27年の税制改正により、事実上相続税が増税された。増税が原因となり、当然の結果として相続税の節税対策、即ち賃貸アパートの建築が増加している。実際、筆者の居住する地域においても、賃貸アパート並びに賃貸マンションの建築が増加している。
しかし、平成20年のリーマンショック以降、一般家庭での可処分所得は増加するどころか減少しているのが現状であり、少子高齢化の影響もあるため賃貸アパートに対する需要は何年もの間横ばい状態だった。そのような状況で相続税の増税に対する節税対策としての賃貸アパートの建築の増加。これでは供給過多となり、空室率が増加するのも理解できる。
建設時に空室0でも相続時に賃貸0であれば減額制度は受けられない
前述の賃貸アパート並びに賃貸マンションの相続税の評価額の減額制度だが、空室率と大きな関係があるのだ。
相続税の場合、空室率ではなく賃貸割合となる。意味は真逆である。空室率0%だったら賃貸割合は100%となるわけだ。建築した賃貸アパート並びに賃貸マンションの賃貸割合が100%だったなら、問題無く減額制度の適用を受けることができる。もし、賃貸割合が0%(空室率100%)だったらどうなるか。賃貸している事実に該当しない、つまり賃貸していないと見做され、評価額の減額制度の適用を受けることができなくなってしまうのだ。
相続税の評価は、相続発生時の状態によって決定するため、新築時には賃貸割合が高くても、相続時に賃貸割合が低ければ、評価額の減額制度の適用を受けられず、多額の相続税を納付しなくてはならなくなる。
過ぎたるは及ばざるがごとしという諺がある。行き過ぎた節税対策は、相続後に状況によっては大きな負担を強いられることになりかねない。安易な節税対策をとるのではなく、状況を的確に判断し、自分達に最も適合した対策を練っていって欲しい。