ここ近年、中国で墓地が不足しているという記事が日本経済新聞(5月8日付け)にありました。
現代の中国は火葬が定着しており、通常は個人の墓を建て遺骨を埋葬するのだそうです。しかし高騰した土地を購入することが出来ないために、代わりに地方の老朽化したマンションが使われ、そこに祭られる例もあるといいます。記者は実際に使われていた部屋に入り、その痕跡を見たといいます。
あの広大な国土を持つ国でどうして?という疑問と同時に遺骨を大事にする同じ文化圏であることを痛切に感じました。
墓石の下にはカロートと呼ばれる空間がありそこに骨壷を納める
日本も負けず劣らず遺骨を大事にする国民性です。遺骨収集団を持ち出すまでもなく、一般の方の遺骨も大事に埋葬されます。火葬された後、49日か100ヶ日が過ぎると親族の見守る中で墓地に埋葬するのが現代のだいたいの通例です。ではその埋葬先、お墓の仕組みをご存じでしょうか?
お墓はザックリいうと2段に分かれているといえましょう。まず地上の墓石があります。そして墓石の地下には小さな部屋があります。むしろ空間といったほうがいいでしょうか。『カロート』と呼ばれています。
カロートはコンクリートやなめらかな石でしっかり底や側面を塗り固め雨水や泥を防ぐタイプのものと、底を土のままに残してしてあるものとがあります。地方によってはもっと違う形もあるかもしれません。現在のお墓はしっかり塗り固め雨などがしみ込まないようにしたものが圧倒的に多く、80%はこの形だとのことです。骨壺に入れられた遺骨は骨壺に入れたままこのカロートに安置され、ふた石をして墓石をもとに戻すのです。
カロートの作りが違う地域がある
ただ山陰のある地方で見たお骨の納め方はちょっと違いました。残りの20%の下が土のままになっているタイプのお墓です。
納骨の時、さらしで作った30センチくらいの袋状のものを家族が用意します。そのさらしは両方とも縫って袋状にする家と、片方だけぬったものと家庭により様々のようですが、基本的に縫うときは結び止めはしませんし返し縫もしません。そしてさらしにお経を書くことが多いようです。そして墓地でお骨を骨壺から出してこのさらしに丁寧に包み、そのままカロートに直に入れるのです。下は土ですからいわゆる土に返すということなのでしょう。この地方は昭和30年代まで土葬だったということです。
お墓を買わずとも樹木葬や、遺骨をダイヤモンドにしてしまう方法もある
この頃は樹木葬で墓に納めないやり方や散骨の話を耳にします。そうかと思うと自宅に保管し、身近にいてほしいという声やダイヤモンドにして身に付けていたいとの声もあり、遺骨に対する考え方がだいぶ変わってきたように感じます。
そんな現代だからこそ、故郷の懐に抱かれ家族にも見守られながら自然に帰るやり方はかえって新鮮に思えます。祖先とともに土にかえり自然に帰るやり方を、もう一度見直してもいいのかもしれません。