ある日の墓参りの際、霊園の手洗い場にタワシが置かれているのが目に入った。小型の亀の子タワシにプラスチック製のハンドルのような物が付いているタイプで、誰もが見たことがあるありふれた物だった。
ここに置かれているということは墓掃除に使うための物であり、霊園の方が用意して下さったのだろうと思って私はそのタワシで亡き父の眠る墓石をそれでガシガシと磨いていたのだが、母に「そんなもので磨いてもいいの?」と訝しく尋ねられた。
お墓をタワシで掃除するのはダメ!
「霊園に置いてあるものなんだからいいんじゃないの?」と私。
「それじゃ傷が付きそうだし、タワシで擦っちゃダメってテレビで言ってた気がするし、お父さんが痛いじゃないの」と母。
お父さんが痛いじゃないのという下りはさておき、テレビで言ってた気がするというのは聞き捨てならなかった。
そして、私はそれまで墓掃除の方法というものをきちんと調べたことがなかったと気が付き、この機会に調べてみたところ、どうやら母が正解だったようである。
墓石は石とはいえタワシなどで擦ると傷が付くこともあり、表面がコーティングされている場合はそれが剥げてしまう危険性もあるという。
歯ブラシや軍手、スポンジ、布等がオススメ
墓の劣化の原因は主に埃、排気ガス、苔等で、海の側にある場合は塩が付くこともあるらしい。基本的には水を掛けて柔らかい布やスポンジで拭き取ればきれいになるようだ。
文字が刻んである部分や小さな隙間を磨く時に活躍するのは歯ブラシや軍手…つまり、テレビの情報番組等で紹介される家庭内のお掃除術のようなものが、そのまま墓掃除でも使えるということだ。
特に軍手は意外な掃除用具として、手にはめてそのまま掃除をしたい部分を指で磨いて捨てられるということで覚えておきたい道具である。
定期的に墓掃除をしている場合はこれで充分だと思われるが、問題は遠方にある墓などで、滅多に掃除に行かれないケースである。掃除の機会が減ると当然だが墓石の汚れは落ちにくくなり、劣化のスピードも進んでしまう。
洗剤は石材用がオススメ!玉砂利も綺麗すれば完璧!
水洗いだけでは落ちない汚れは洗剤を使って同様に掃除することになる。
ここで注意したいのは洗剤の種類だ。これまで紹介した道具は家庭内の掃除でも馴染みのあるものばかりだったが、洗剤は石材用の物にしておいた方が無難だろう。そして石材によっては相性が悪く、シミや変色の原因となることもあるらしいので、事前にきちんと調べておきたい。
最後に見落としがちなのが玉砂利だ。敷地内に玉砂利がある場合は、スコップですくってザルに入れて水洗いをしてから元に戻す。手間はかかるが、墓石の周りに敷き詰められた玉砂利がきれいになると敷地全体が明るくなり、見違える程きれいになるのだ。
家の掃除と類似点が多かったお墓の掃除
調べてみてわかったのは、基本的には家庭内の掃除と類似する点が多く、出来るだけこまめに掃除をすれば短時間で終えることが出来るという点だ。
ちなみに、我が家が世話になっている霊園の手洗い場に置かれていたタワシは次に訪れた時には姿を消していた。
それは墓掃除では避けた方がいいと利用者の誰かに指摘され霊園の職員が処分したのか、逆に利用者が使用後に置いて行った物を職員が処分したのかもしれない。