エンディングノート」の名は、2011年10月に公開された同名の映画によって知られるようになった。
しかし、実際にエンディングノートを見たことがある人、あるいは書いたことがある人となると、あまり多くはないのではないだろうか。
エンディングノートとは和製英語で、実際に英語圏にある単語ではない。直訳風に日本語で表現するなら、「最期の覚え書き」となる。
自分の人生の思い出や、家族や親しかった人に伝えたい情報を書き記しておく冊子のとだ。
エンディングノートと違い法的効力を持つ遺言書
エンディングノートのように残された人に意思を伝えるものとしては、遺言書の方が一般的であろう。エンディングノートは書いていないが、遺言書は用意している、という人はかなり多いはずだ。
実際、私の親族の高齢の方もそのようなパターンがほとんどである。遺言書は財産分与などの法的効力を持ち、弁護士や司法書士、行政書士といった専門家と共に作成する場合が多い。
対してエンディングノートは法的効力を持たず、その代わり安値で気軽に作ることができる。
遺言書の不足部分を補完するエンディングノート
エンディングノートを書いておくことで、急に万一のことがあったとき、家族を困らせないようにできる。
たとえば本人しか知らないものの置場所や、どのような葬儀をあげるかといった生前の本人の意思を残してくことができるからだ。
また、日常生活の覚え書きとしてもメリットがある。年を取るなどして物忘れの増えた人などには、一ヶ所に住所や連絡先が記されているエンディングノートが役に立つ。
さらに、エンディングノートは残された人に自分の気持ちや思いを伝えることができるものだ。普段は恥ずかしくて言えないようなことを書き残すことで、家族の悲しみを和らげることができる。
死後ではなく、死ぬまでの時間を見つめなおすエンディングノート
エンディングノートは500円程度の安価で買えるものもある。最近ではネット上で作成できるサイトもあるという。
それでもエンディングノートがあまり普及しないのは、日頃私たちが、死というものに対して向き合う機会が少ないからではないだろうか。私自身も、まだ自分の年齢から考えれば、死は遠い未来にやって来るものだろう、という希望めいた考えがある。
しかし実際、人間はいつ死ぬとも分からない存在であり、免れることもできないのだ。
エンディングノートを書くことは自分の人生の締めくくりを記すことでもあるが、一方で、死ぬまでの時間をどのように過ごすかについて思いを馳せる機会にもなるように思う。何かがあったときのために、そして、自分の生を見つめるために、エンディングノートを書くという行為はもっと広がっていってもよいものだろう。