葬儀とくれば、相続とは言わないが、両者は切っても切れない関係にあるのではないだろうか。
しかし、相続財産等が相続税の基礎控除額の範囲内に収まってしまう場合は、相続については無関係となるので、必ずしも葬儀即ち相続と言ったことには繋がらないこともある。
だが、問題は相続財産等が相続税の基礎控除額を超えることが明らかな場合は当然だが相続手続きをしなくてはならない。
争いの原因となるのは何と言っても遺産分割協議
筆者がかつて税理士事務所に勤務していた時、数多の案件に携わってきたが、相続の手続き上、一番揉めたのは何と言っても遺産分割協議であった。
この遺産分割協議について筆者の経験から得た、知られているようであまり知られていないことを綴りたいと思う。
遺産分割協議そのものについてはネット上にて詳細な解説があるし、また関連書籍も豊富にあるので、当コラムでは解説は行わない。
では、知られているようであまり知られていないこととは何なのかと言うと、協議の手続きを遂行する職権を持つ専門業者である。
税理士・弁護士・司法書士と相続の手続きに関係する職権を持つ専門業者を挙げてみた。
筆者の経験上、ご遺族の方々は最初に税理士に相談、依頼することが多く見受けられたが、殆ど・・・否、ご遺族の全員が遺産分割協議について税理士に依頼すれば全て事足りると思っていたようだった。確かに、ある意味間違いではない。
遺産分割協議は弁護士、土地等の登記は司法書士、相続税の計算は税理士
しかし、根本的には大きな間違いである。
遺産分割協議において遺産の分割に関する職権を持つものは弁護士で、税理士ではない。更に、土地等が分割された場合登記するが、登記に関する職権を持つものは司法書士であり、税理士ではない。税理士は、あくまでも相続税を計算し、ご遺族に報告し、ご遺族の了承を経てご遺族の代理として税務署に申告する職権を有する。
遺産分割協議そのものについて、税理士には何の権限も職権も無いのだ。それを理解していないご遺族が非常に多い現実がある。今一度相続と葬式について冷静に考慮して、ネットや書籍にて見聞を深めておくのも終活のひとつではないかと思う。
信頼できる税理士に弁護士や司法書士を紹介してもらうのも有効な手段
最後に余談だが、税理士に依頼すれば全て事足りるとして、ある意味間違いではないと綴ったがこの件について補足したい。
相続手続きに強い税理士は、職務上弁護士、司法書士と連携しながら手続きを遂行する。故に、相続について遺産分割協議に強い弁護士と司法書士を知っている。つまりは、税理士から有能な弁護士や司法書士を紹介して貰った方が、ご遺族自身で弁護士、司法書士を探して相続手続きを依頼する手間が省ける意味で間違いではないのである。