お葬式や法事に欠かせないものと言えばやはり「お香」だ。
普段使う習慣のない人にとっては何となく漠然としたイメージしかないこのお香だが、「お香」と一口に言っても数多くの種類があり、その用途や材料なども異なっている。
今回はお葬式や法事などによく使われる4種類のお香についてまとめてみた。
線香(せんこう)
細かくした材料を練り合わせて使いやすい棒状にしたもので、一般家庭で一番よく使われている。そのうちの代表的な物が「匂い線香」と「杉線香」である。
匂い線香は椨(タブ)の木の樹皮を粉にした「タブ粉」で香木の粉末や香料、炭の粉などを練って作られ、少なめの煙と良い香りを漂わせるため、家庭や寺院などの主に屋内で使われている。
これに対して杉の葉を粉にしたものを原料とする杉線香は大量の煙を発生させるため、主に墓地や宗教的な行事で煙を受けたい時など、屋外で使用するのに向いている。
焼香(しょうこう)
沈香(じんこう)、白檀(びゃくだん)、丁子(ちょうじ/グローブ)、鬱金(うこん)、龍脳(りゅうのう)の五種類を基本に、いくつかの香木を砕いて混ぜ合わせて作られたお香。
いわゆるお通夜・お葬式の「お焼香」に使われるお香で、混ぜるお香の種類によって「五種香」、「七種香」、「十種香」などがある。主に直接火種にくべて使われる。
抹香(まっこう)
邪気を払うとされる樒(シキミ)の樹皮や葉、もしくは栴檀(センダン)や沈香などを乾燥させて砕いたもの。
焼香と同じく直接火にくべて用いられるほか、かつては仏像や仏塔などに振りかけたり、ゆっくりと燃える性質を利用して時香盤(香時計)などにも使われてきた。
現在では「お焼香」としてこの抹香のほうを用いる場合や、焼香を焚く際の火種として用いられる事が多い。
塗香(ずこう)
古くから、修行僧が体に塗って邪気を払い、浄めるために用いられてきた粉末のお香。
そのまま直接体に擦り込むほか、自分の唾液を含んで塗りやすくしたり、清らかな水を混ぜて練香として用いられる事もある。
材料には桂皮(けいひ/シナモン)や鬱金、丁子などが用いられている。
最近では「和のフレグランス」として若い女性からも注目されており、奈良の唐招提寺では塗香の成分を含んだハンドクリームが販売されている。
日々進化しているお香
日本国内にも数多くの種類が存在するお香だが、仏教を信仰するアジア諸国を中心に、世界中にはさらに多種多様なものが存在する。
また、昔ながらのものだけでなく、ラベンダーやローズなどよりカジュアルで親しみやすい香のものもよく用いられるようになった。
体に塗って用いる塗香には、メーカーによってはコスメグッズのように用いるものも発売されている。
アロマグッズとしても既に定着しているお香だが、今後はより「和」の香りを発するものとして注目を集めていくかもしれない。