筆者の夫はプロテスタント教徒であった。病の宣告を受けたのち、洗礼を決意したのだ。
入院病棟から危篤を告げる電話があったときには、即、牧師に連絡した。キリスト教では最期の時に、牧師または神父が臨終の祈りを捧げてくださる。
そうして穏やかに天に召されるとそのまま、牧師が教会で懇意のキリスト教葬儀専門の葬儀屋を紹介してくださった。必死に電話帳で探す手間がない。
費用も明確!賛美歌は特に感動的!
葬儀ではまず、費用の面が非常にクリアであった。
「みなさんのお気持ちですので…」などと含みのある回りくどいことは言われない。『葬儀に関する教会への献金』として、ズバリ「教会へ10万円、牧師へ10万円、オルガン奏者へ2万円」と明記されたメモを、そっといただいた。なんと分かりやすい!
あれよあれよという間に教会員の方がすべて仕切ってくださり、式では故人の愛した讃美歌を共に歌い、祈りを捧げ、主のもとに召された祝祷を賜る。何とも感動的。そして火葬のときにも、皆で賛美歌を捧げる。
クリスチャンでなくても対応可能な教会は少なくない!
さらにその後がシンプルである。もちろん戒名はいらない。仏壇も必要ない。そして初七日も四十九日もお盆も一周忌もない。いや、やりたければ記念礼拝をお願いすることは可能である。ただそれは、宗教的な意味合いではなく、遺族が故人を偲ぶうえでの区切りのようなものであり、執り行わないと魂が極楽へ行けない、という類のものではない。キリスト教の教えでは、死者は亡くなった時点で神の国へ召されるのだから。
「そうは言っても、クリスチャンでないとお願いできないんじゃないの?」と思われる方も多いだろう。しかし意外にも、信者以外の式を引き受ける教会も少なくはないそうだ。興味を持たれるなら、一度近隣の教会に問い合わせてみるのも良いかもしれない。プロテスタント系の教会の方が、比較的柔軟に受け入れてくれるようだ。
菩提寺には事前に確認が必要!
ただし、注意すべき点に、墓の問題がある。先祖代々のお墓が寺にある場合、トラブルにも成りかねないので、事前に確認しておいた方が良い。
筆者の夫は本家の長男という立場であったため、生前に直接、菩提寺の住職を訪ねたそうだ。そのときには、葬儀は教会で遺骨は寺の墓へ、ということで快く承諾していただいたとのことだった。しかし亡くなってみると、お墓にお骨を収めるにはそれ相応のしきたりが…と、なんと二度目の葬儀を執り行うことに。ありがたく戒名もいただいてしまった。あの世で迷子になっていやしないかと、若干申し訳ない思いである。
しかしそれも、宗派はもちろん、住職のお人柄や檀家との付き合いにもよるだろうから、まずは相談してはいかがだろうか。特に深くは仏教を信仰していないというのであれば、キリスト教の葬儀も、選択肢の一つとしてお勧めしたい。