数年前の事だが、筆者がお世話になった大学の先輩が不運な事故でお亡くなりになった。
若すぎる彼の死に周囲が戸惑い、悲しむ中、SNSのメッセージを通じて回ってきたのはこんな内容だった。
データ復旧の業者も選択肢の一つ
「故人の携帯電話のアドレスを開いて親しくしていた方に葬儀の連絡等を送りたいが、パスワードがかかっていて見られない」
「故人が好きだった芸能人や趣味に関連する事など、パスワードのヒントになりそうなものに心当たりはないか?」
ご家族が困っているとの事で、後輩の私達も頭をひねったが、どうしても分からない。後日お母様に伺ったところ、何百通りもの数字を試し、どうにか偶然行き当った数字で携帯を開くことができたという。しかし、そうなる頃にはもう一年近く経ってしまっていた。もし、故人の持っていた携帯やパソコンなどのデータが見られなくなってしまったら。
そんな時、力になってくれるのがデータの復元を行う専門の業者だ。
亡くなった方のデータを復元したいと思ったら?
携帯やパソコン、最近ではUSBメモリなど、何らかの障害でデータの取り出せなくなってしまったハードウェアの中身を復元してくれるプロが存在する。トラブルの発生した機器を解析・修理などし、データを復旧する事を専門に行う業者である。データ復元の流れはおおむねこのような流れになっている。
(1)依頼者が業者に相談
(2)業者によるデータ機器本体の状態の診断・鑑定
(3)診断結果報告(料金見積もり)
(5)データ復元・取り出し依頼
(6)復旧作業
(7)支払/データ納品
自力で何とかできるのに越したことはない。だが、もしもの時には助けてくれる会社がある事を知っておこう。
どんな状態のものであれば復元が可能か
携帯やパソコンのパスワードが分からない程度のものであれば、プロの手で比較的簡単に解除できる場合が多い。さらに状態にもよるが、ハードウェアの外側が壊れてしまって電源が入らない状態のものでも中身のデータさえ無傷で残っていれば復元ができる場合もある。
素人が見ればもうだめだ、という状態でもプロが救ってくれるかもしれない。諦める前に本当にダメかどうか、とりあえず業者に問い合わせしてみるのも一つの手段だ。
費用はどれくらいか
いよいよ復元してみましょう、となる前に確認しておきたいのがデータ復元にかかるお金の事だ。業者のフリーダイヤルに問い合わせるだけならタダである。だが、注意したいのがその次だ。
例えば壊れてしまった携帯・スマホ等の場合、まずデータを復元できるかどうかを「鑑定」するだけで数万円の費用がかかることがあるのだ。
さらに、データ復旧が可能となった場合、業者によってはさらに数十万円の費用がかかってしまう。
故人を偲びたいと願う遺族にとってお金は関係ないと思いたいところだが、少々検討が必要な金額である。焦って復元を申し込んでしまう前にどこから料金が発生するのかをきちんと確認することが肝心だ。
さらに場合によっては複数の会社に見積もりを取るなどし、後で「こんなはずではなかった」と後悔しないようにしよう。
お金がかかっても故人の生前を知りたいと思う遺族はかなりいる
データ復元にはかなりの出費を要する。
しかし、専門の業者には多ければ亡くなった方のご遺族から数十件の依頼が来る月もある。大事な家族の足跡・想いをいくら払ってでも取り返したい。そんな強い思いを抱いて、壊れた携帯やパスワードの分からないパソコンを業者に持ち込む遺族がそれだけ多いという事だ。
残された家族にとって故人の遺したデータは大切な思い出、いや場合によっては故人そのものなのかもしれない。
若者であれば特に、本人も家族も「まさかの事態」が起きる事など想定せずに日々の生活を送っている事が多いだろう。しかしパスワードやIDなど、本来は本人しか分からない鍵が必要なものを遺族が確認したいと思った場合、自力で何とかするにせよ業者を利用するにせよ、かなりの労力やお金がかかってしまうようだ。
携帯・スマホやパソコンのデータの中には、「もし自分が死んだら誰にも見られたくない!」、「消して見れなくしてしまいたい」というものもたくさんあるだろう。
だが、大事な友人の連絡先や家族との写真など可能なものであれば、いざとなった時に家族が困らないよう、情報を共有するなどしておいた方が良いかもしれない。