社会が高齢化すると、注目されるものがお墓販売に関わる商売である。
しかし反面、お墓の需要が増えて、取引や販売件数も増えるとなると、必ず詐欺などの悪徳商法が問題視される。
この一連の流れは、現代の日本にも非常に当てはまるだろう。そこで今回は、いつ自分の身に降りかかるかもしれないお墓悪徳商法について、具体例を紹介し、最後にそれらへの対策を紹介する。
「安いのに高品質」を売り文句にする品質偽装と売り逃げ!
まず、具体的に問題となっている例は、墓石の「品質偽装」と「売り逃げ」に関する問題である。
お墓というものは、家と並んで人生の中で数少ないながらも、その金額が非常に大きくなる買い物といえる。中でも、墓石が高価なものとされる所以は、貴重な国産のものを扱っている場合が多いからである。そこで実際の悪徳商法では、買い手の「お墓にかかる費用を安く抑えたい」、「でも墓石はいいものにしたい」という2つの思いの心理的急所が突かれやすい。
具体的には、海外から横流しした加工すらされていない粗悪な墓石を「国産だけど今だけ大特価セール」などと銘打って、消費者に現物を見せることなく買わせることが多い。もちろん蓋を開けてみれば、使い物にならない大きな石が残るだけで、返品しようと思っても、連絡がつかない。これが「売り逃げ」である。
詐欺グループ自らがお墓を壊して、そのタイミングでお墓を売りつける悪徳商法
次に紹介する例は、最近よく耳にするようになった「墓石破壊詐欺」という悪徳商法についてである。
仕組みはいたってシンプルで、詐欺グループの一味が夜中のうちにコッソリとターゲットのお墓を壊しておき、ターゲットが破壊されたお墓を確認して動揺したところに、詐欺グループがつけこむかたちで、お墓を売り込む方法をとっている。
この時のポイントは、販売業者からお墓を進められるタイミングが如何にも都合が良すぎる点や、墓石が異様に安価な点、はたまた墓石だけでなく、セキュリティ万全を売りにする架空の霊園まで売り込まれる点だといえる。この「墓石破壊詐欺」も先の具体例同様に、買い手の動揺という心理的急所を的確についてくるために、十分に注意したい。
東日本大震災で実際に起こった詐欺!
最後は、ニュースにもなった東日本大震災後に流されたお墓と遺骨をめぐる詐欺の実例である。
お年寄りのAさんは大地震をなんとか生き延びたものの、夫が眠るお墓は津波で流され、遺骨を拾い集めるのがやっとな状態であった。そこへボランティアで被災地を訪れたと名乗る青年Bが、話し相手として通うようになり、Aさんも徐々に心を開いていった。ある日、ボランティアを終え別れの挨拶に来たBさんから、Aさんは彼が紹介する格安な寺院墓地の話に飛びついてしまう。Bさんの急かす様子に同調して、Aさんも別れ際にとりあえずと、10万円と夫の入った骨壷を渡してしまった。後日Bさんからの連絡は途絶え、調べてみれば、彼が紹介した寺院は架空のものだったということが判明した。被災者の弱りきった心につけこむ悪質な詐欺だったといえるだろう。
具体的な対処法とは?
さて、これらの事例から僅かではあるが、私たちに出来る対策を考えてみたい。
まずどの事例においても加害者は、私たちの「お墓に関する知識のなさ」と「時間的制約(今だけセール、タイミンのいい売り込み)からくる心理的動揺」を的確についてくる。したがって、私たちはこれらを克服しなければならない。
前者の知識の欠如については、墓石は効力のある「原産地証明書」を発行してもらったり、霊園は実際にその土地に足を運んでみたりして、補完的に知識を蓄えていく必要がある。
後者の心理的動揺については、大原則として即決をしないことがまず以て挙げられる。また、墓地に関する契約自体を熟考することも重要ではあるが、売り逃げを予防するためにも、墓石や霊園についてその後5年10年の保証が完備されているかを確認することも、忘れてはならない。
一生に一度の大事な買い物を棒に振らないためにも、まずは買い手の私たち自身が売り手に対抗できるような知識と洞察を持って臨むことこそ、お墓詐欺に遭わないための良薬である。