ひと口にアフリカと言ってもアフリカ大陸全体で見ると様々な文化、民族があります。今回はアフリカの中でも特に原住民の葬儀、死者の弔い方「葬制」についてご紹介しましょう。
アフリカでも他と同様に肉体と魂の分離と捉えられている死
アフリカの人々にとって死は世界の他の民族文化と同じように肉体と魂の分離と考えられています。肉体が消えてしまった後も、親族とともに祖霊(先祖)としてこの世に関わりを残してもらうための弔いの形が「葬制」です。その形は部族によって様々です。
基本的には教会や寺院といった特定の施設に人を葬るという発想はなく、もっと現世で生活する人間たちに近い場所に死者を葬るのがアフリカ原住民のスタイルです。叢の中に死者をそのまま放置することも行われていますが、一般的には死者は土中に埋葬されます。遺体は獣の皮に包んだり壺に入れて土の中に埋められます。埋める場所は家の中や戸口、近くの叢の中、通り沿いなどこれも様々ですが墓を作る部族もいます。墓にする場合は土葬した上に土を盛り、そこに獣の頭蓋骨、土器、石を積み上げるなどその部族の風習に応じて墓の形を作ります。ただし仏教徒のように墓所でお経をとなえるなど、その墓の周りで何かの祭礼を行う習慣はないようです。
エジプトでは王族のミイラが有名ですが、スーダンでは一般の民衆にも死者をミイラにする習慣が残っています。ミイラにした死者を部屋に安置し、親類縁者が別れを惜しむために面会に訪れるのです。
生前での行いが死後の世界に影響する
このようにスタイルは部族によって異なりますが、共通しているのはアフリカの葬制は死者をいったん現世から葬ってあの世へ送り出し、いったん祖霊の座につけた後にあらためて現世で生きる子孫たちとかかわる関係を確立する二段構えの過程となっているということ。
死者を祖霊とした後は、その子供を死者の生前の地位に就任させるなどして一族の後継を維持します。死者が生前に行っていた仕事が治療や、狩猟、音楽、占いなど特定のものであれば、子供がその後継者として同じ仕事を引き継ぎます。
いっぽうで子供のうちに死んだ者や、生前に悪い行いをした者、妖術使いなどは、正しい葬制のプロセスを経ていないため祖霊としての地位を確立できません。これらは行き場のないエネルギーのようにさまよい、ときには祟りを起こすなど生者に悪影響をおよぼすこともあると考えられています。その場合は悪魔祓いの儀式を行い、その悪影響を鎮めるための処置を行います。