~遺品整理は情報漏洩の危機~
縁起でもない話だが仮に筆者の両親が突然亡くなったとする。遺品整理を業者に頼まず一人息子である筆者がすると、親が息子に隠していた秘密が出てきてしまうかもしれない。特にパソコンや携帯電話は個人情報の宝庫だし危険だ。実際息子として知りたくない父親の一面を、昔パソコン上に垣間見たことがある。
見られたら困る情報は大抵パソコンか携帯電話にある
うちの家族がパソコンを始めて買って間もない頃の話である。父親宛に送られてきたメールを当時中学生の筆者は好奇心から見てしまった。送り主は公務員である父親の同僚であった。
メールにエロ画像が添付されていた。同僚はこういう画像がインターネットを使えば楽々手に入りますよ~と文中ではしゃいでいた。思春期真っ只中の自分にはショックだった。少しばかり心が傷ついたと思う。
しかし父親も男である、致し方ないことだ。むしろ勝手にメールを覗いた自分が悪い。それにメールは送られてきたのであり、父親がエロ画像を所望した訳ではないだろう、多分。ただそういうメールを交換する間柄や父親の男としての側面を知りたくはなかった。
遺品整理で家族が故人のパソコンや携帯電話などを不用意に確認すると、上記のような(例として若干不適切だが)故人が知られたくない情報に触れてしまう可能性がある。この際遺族にとっては故人のどんなものでさえ愛おしい、という美辞麗句はとりあえず置いておこう。父親がボンテージ姿の女性を大層好むなど知りたくはなかったのだ。逆の例もまた然り。自分が突然死を迎えることになったら、何の名誉も残さず恥だけ残してしまう。
では一体どうすれば自身の知られたくない情報を守り、安らかに最後を迎えられるのだろうか。
死後にプライバシー流出を防ぐ「ラストメッセージ」
「ラストメッセージ」というwebサービスが今年から始まった。これは自分の死後にプライバシーを保護するため、信頼する第三者にパソコンやスマホ・携帯電話内のデータを消去してくれるよう委託できる終活サービスである※。
同サービスではデータの消去を依頼する第三者を「バディ」と呼ぶ。バディは家族や友人や職場の先輩後輩など誰でも登録できる。
同サービスに登録すると、利用者のもとに生存確認メールが毎週届く。その反応が滞った場合、運営会社がバディに利用者の安否を確認してもらう。利用者の死亡が確認されたら、バディは運営会社に報告し機密ファイルの解除キーをもらう。バディが解除キーでロックを外して、機密ファイル内のデータを消去するという仕組みだ。
つまりこのサービスを用いれば、自分の死後に誰かが自分の知られたくない情報に触れる機会さえなくせるのである。
「何を遺さないか」で最期の印象は決まる
中にはこう思われる方もいるだろう。故人のパソコンや携帯電話などはプライバシーを尊重して開かずにそのまま処理すれば良いのではないか、と。確かにその通りで現時点では筆者もそう考えるが、実際肉親の死に直面してみるとそこまで冷静な対応が出来ないかもしれない。遺族は故人の何らかの生きた痕跡を、少しでも多く掻き集めてしまうかもしれないのである。
終活として遺さないものを準備しておくことは、自身が安らかに最後を迎えられる方法であると思う。またそれは同時に、遺された者達に対する最大限のケアであるとも思う。