「冠婚葬祭」と聞くと、粗忽な私は「ああ、結婚式とお葬式ね」で、すましてしまうのだが、もちろん、結婚式と葬式だけではない。
まず「冠」は成人の祝い。「婚」は結婚。「葬祭」は、葬式と祖先を祭ることの二つを指している。つまり「冠婚葬祭」の四文字は、私たちの人生にとって重大なイベント、四つを端的にしめしているわけである。
冠婚葬祭にはご祝儀や不祝儀(香典)の相場
ところで、冠婚葬祭などのイベントには、当然であるが費用が発生する。イベントを執り行う者はもちろん、参列するにも、結婚式にはご祝儀が、葬式には香典がいる。では、その中身はというと、現在のところ、式を行う当人(葬儀の場合は故人だが)と参列者の関係、また、参列者の年齢等によって、おおよその金額が目安として決められている。
たとえば、二十代のあなたが友人の結婚式に出席する場合、ご祝儀は2~3万円程度。四十代のあなたが可愛い姪御さんのためにご祝儀を出す際には、3~5万円程度となっている。
葬式の場合、これは、ご祝儀ではなく不祝儀、つまり香典になるが、たとえば、二十代のあなたが勤務先の上司に香典を包む場合は5千円程度。四十代のあなたの場合は1万円程度、というのが相場である。もちろん、相場・目安であって、この金額にしばられる必要はないのであるが。
香典泥棒の手口や常套句とは
一方、こうしたイベントに人が集まり、お金が集まる場所には、必ずそれを狙う連中がやって来る。「香典泥棒」などと呼ばれるのがそうした連中の一種である。
彼等は紳士然として受付に歩み寄り、「古い友人です」と沈痛な面持ちで挨拶し、「ご焼香はすみましたか。わたしが見ていますので、どうぞいってらっしゃい。いいやつでした。あいつも喜ぶでしょう」などと、言葉巧みに話しかけ、受付係が席を離れた隙に、香典を持ち去るのである。
なかには、有名な(?)香典泥棒もいて、その泥棒がやって来ないと会社の格にかかわる、なんてことも昔はあったとかなかったとか。これはつまりその泥棒がやって来ないと「うちの会社をなんだと思ってるんだ」と、葬儀社が気をもむということである。
受付は最初から最後まで責任を持つことが重要
しかし、実際は、こんなのん気なことではすまないだろう。香典は、線香や花の代わりに、死者の霊前に供えるものである。そこには葬儀に参列した人々の死者を弔う気持ち、あるいは、残された家族へのおもいがこめられている。香典の受付係は、そうしたものをも受け取る立場にあり、また、それを守る立場にあるといえるだろう。責任は重大、油断は禁物である。
その際の大切なことは二つ。ひとつは、持ち場を離れないこと。もうひとつは、集まった香典から目を離さないことである。
実際、これも旧聞に属することであるが、韓国の盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領の葬儀の際、ソウル市徳寿宮大漢門前に設けられた市民焼香所から、国民葬で集まった香典2000万ウォン(約157万円)が持ち去られるということもあった。警備陣が目を光らせていたにもかかわらず、である。
くれぐれも、ご用心を。