小学校3年のときに祖父が亡くなり、それが死と葬儀というのを身近に覚えた初めてのことでした。なぜか鮮やかに印象に残っているのが、家族が集まって「インゴーをどうする?」と相談している場面です。「金の問題じゃない!」などと深刻な表情を浮かべていて、子供ながらに葬式ってなんだか大変だなと思ったものです。
「インゴー」とは「院号」、つまり戒名のランクのこと!
「インゴー」と呼ばれていたのは、戒名の一部のこと。
宗派によって異なる部分もありますが、戒名は通常、院号・道号・戒名・位号・置字という各パートで構成されていて、院号は、本来、お寺に多大な貢献を残した人に与えられるものです。
また、~居士(こじ)~大姉(だいし)、~禅定門(ぜんじょうもん)~禅定尼(ぜんじょうに)、~信士(しんじ)~信女(しんにょ)などとなる名前の下部にあたる位号は、戒名のランクを示し、お布施の額で決まると言われています。
つまり、祖父の葬式に際して、家族は、戒名をどのランクにするか、いくらまでなら払えるかで頭を悩ませていたのでした。
お金であの世までも格付けする戒名
筆者が今亡くなったとしたら、祖父とは同じあの世にはいけそうにありません。
残念ながら、ランクがかなり下がる戒名しかまかなえないでしょう。信仰の問題というより、お金の問題です。お金というのは、人生の隅々にまでつきまとい、あの世までも格付けしていくものかと思うと、ややうんざりしてしまうのは持たざる者のぼやきという面だけではないと思います。功徳や供養はお金の額なの?と思うと残念な気持ちになりますよね。
続々と出てくる戒名授与サービス
宗教の問題ではありますが、古い制度の上にあぐらをかいている葬式仏教には今後、改革の波が押し寄せていくのではないでしょうか。死後の世界は、結局、信仰により概念、解釈が違ってきますので、檀家制度で振り分けられていただけのお寺の教えに対して、心のつながりが持てないと思ったら、今の人は離れていくのではないでしょうか。日本経済が右肩上がりだった時代とは違い、低成長で核家族化、少子高齢化、ネット社会化が進む現状を踏まえたあり方に変わっていく部分も多いでしょう。葬儀の各ディテールが多様化してきた今では、戒名と読経のコース別料金を明示している団体もありますし、戒名を自分で付けるためのハウツー本も出ています。さらに「戒名添削OK
「ネットで戒名を付けます」などというサイトもあるようです。
通名に戒名が使われていた戦国時代の武士
戒名というのは、本来、仏門に入った証として頂ける名前です。合戦で常に死を意識していた戦国大名の中には、通名に戒名が使われている人もいます。武田信玄とか、上杉謙信などの名前は、戒名(出家名)からきているそうです。死を意識しながら日々生きていくというところに、現代でも宗教の最も大事な点があるような気がしますけどね。
以上、戒名とお金の話でした。