私には遺せるような財産なんて殆ど無い。65歳で住宅ローンが完済する中古マンションと生命保険ぐらいだ。私の家庭事情は複雑で、一度も会った事がない腹違いの弟がいるが話したことすら無い。もしも私に万が一のことがあって、私の死後にしゃしゃり出て来られたらたまったもんじゃない。ということで遺言書を書くことを決心した。
自分の遺志を確実に実行してもらうためには公正証書遺言が相応しかった
遺言書について調べてみると、自筆遺言書と、公証役場に行き公証人に書いてもらうことができる公正証書遺言があることを知った。ちなみに公証人とは法律行為や自分の権利について公正証書を作成できる人で、法務大臣が任命する公務員、つまり、法的に確かな書類を作るのを手伝ってくれる人である。
自筆の遺言書では不備が残る可能性がある。それが原因で私の相続が、私の思惑とは外れた結果を招いてしまうかもしれない。とはいえ弁護士に依頼して遺言書を作成してもらうほど大袈裟な相続とも思えない。ということで公証役場で書いてもらう事にした。
まずは公証役場に電話して相談日を予約した
まずは公証役場に電話をかけた。遺言書を作りたいことを伝えて相談日を決めた。その際に、必要な持ち物も伺った。
私の場合は唯一の財産といっていいマンション関係の書類が必要だと言われた。書類は役所から毎年送られてくる固定資産税の書類などだった。他にも財産があるという人は、どんな書類が必要かはしっかり確認すると良いだろう。
1回目の相談:具体的な遺産と相続させたい人と相続させたくない人について相談
当日、必要な書類を準備して約束の時間に公証役場に行った。話した内容や手順は以下の通りだった。
(1)財産の説明。簡単な家系図を書き、家族関係を説明。
(2)相続させたくない人を説明。両親は離婚後、父は再婚し、先方との間に新たに子供が二人いるが、会ったこともなく、話したことすらない赤の他人同然だった。しかし、血縁関係はあったので、私の遺言がなければ、その子供たちにも私の財産を分与しなければいけなくなる。それを遺言書で防ぎたいと説明。
(3)相続させたい人を説明。私は母と再婚した育ての父の養子であり、育ての父の血を引く弟がおりまして、彼に一切の財産を相続させたいと説明。
その日の打ち合わせは30分もかからなかった。
2回目の相談:希望通りの遺言書がほぼ出来上がり証人を決める段取りとなった
次の打ち合わせは1週間後だったが、公正証書遺言はほぼ完成していた。詳細を説明して貰うと、私の希望通りの内容になっていた。
公正証書であるため、普段の日常会話で使わないような言葉が用いられていたが細かく説明してくれた。そして、これを法的に有効な遺言にするには証人が二人必要だと言われた。もしも二人の証人を呼ぶことができない場合は、公証役場の方で紹介してくれるとも説明を受けた。
私は、一人は信頼できる知人に、もう一人は公証役場でお願いした。公証役場から紹介の証人への謝礼は6000円と決まっていた。もしかして、知り合いに頼んでお礼するよりもリーズナブルかもしれないなと思った。
3回目の相談:公正証書遺言書が正式に完成
3回目の相談は証人も立会いのもと行われた。
といっても証人に遺言を読んでいただき、証明の印を押してもらうだけだった。作成手数料は30750円だったが、これは財産の多寡で変わるとのこと。
遺言は三通作成され、原本は役場で保管、謄本つまり写しは自分で保管、一番大事な正本は相続人である弟に保管してもらうことにした。
簡単に安く公正証書遺言書を作ることが出来た。これで私の死後、相続に邪魔が入っても「遺留分はありません」の一言で終わりだ。たったのこれだけで、頭の中のどこかに引っかかていたモヤモヤがなくなり、前向きになれたような気さえした。
少しでも遺言について気がかりな人にはぜひおすすめしたい。